小黒部(こくろべ鉱山史


山に歴史あり
人類誕生前の長い長い歴史あり
しかし、人間とともに歩んだ歴史もあり
 

=管理人=


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 輝水鉛鉱(モリブデン)、鉄重石(タングステン)、黄鉄鉱など産出 

 

歴史的なことは、「池ノ平小屋小史」、「池ノ平小屋関連年表」をご覧下さい。


絶壁中の坑口、小窓1番坑につながる第4号坑道

 大正時代、小黒部鉱山で採掘された輝水鉛鉱(きすいえんこう、モリブデン)は、
人の背によって担がれて小黒部谷を下り、その後大窓雪渓を登り、白萩、
馬場島(ここまで、馬車道が拓かれ、電話も引かれた)を経由して北陸本線の
滑川駅まで運ばれた。大窓、馬場島間には索道が架けられていた
(いまでも、大窓には痕跡の石垣などが残る)。
 滑川まで運ばれたモリブデンは、東京北区赤羽にあった、赤羽飛行機
制作所(経営者、岸一太)に運ばれ、「つるぎ号」という飛行機の、
エンジン用シリンダーの合金素材として使われた。合金の中にモリブデンを
少量添加すると、冶金的に熱に対する強度(熱脆性)が生じる事をこのころ
知られるようになり使用された
「つるぎ号」は陸軍にも納入された。また、
民間の企業としての飛行機製作は、中島飛行機製作所より早く、
民間第1号であった。
馬場島に事務所が建設され、また、滑川は集荷場
として短い期間だったが賑わいを見せた。

小窓1番坑
池ノ平山、とくに小窓1番坑は蟻の巣のように坑道が穿っている。
坑内は、いたって涼しい。


        
小窓1番坑口下、小窓雪渓付近に放置されている、圧力容器(タンク)
ならびにエンジン部材

側に立つ岩も2008年大きく崩壊し、写真の人のいるあたりは崩れた
大岩に占有されています。タンクも小窓雪渓に転落しそうな状況です)

  2010年は、44名の方が坑道、坑内探索を楽しまれました。


鉱山調査に参加して

北アルプス開発史研究会・岩永陽一
  
 坑内の中に入るのが恐いと言う人がいるが、僕も坑内の中に入る前は、確かに「落盤が起こり、このまま入り口が潰れたり、自分自身が潰される」ということは、充分に考えられると感じ、恐ろしいことだと思った。
が、それよりも、なによりも先に興味が沸き立ち、調査団に参加させて頂いた。


今、忘れ去れようとしている坑内を調査する。先の分からないトンネルを進む。50年前の道具達に出合う。それを思うと、リスクより興味が先に立っのであった。
登山や、他のスポーツを始める時と似たようなものだった。
 
坑内への入り口はいくつかあるらしいのだが、そのほとんどが崩壊している。僕達の潜入した入り口も例外なく、崩壊しており、岩と岩との隙間をぬっていかなければならなかった。
 ヘルメットを装着し、ヘッドライトを点灯し、いざ潜入!。入り口を塞ぐように横たわる岩の上より足のほうからゆっくりと入ってゆく。中はずいぶんひんやりしている。まるで、廃坑以来、誰も入っていないような気がする。

 ヘッドライトで辺りを照らすと結構広い。崩壊しているのは入り口だけで、中はシェルターに使えそうなくらいしっかりしている。
入り口付近は詰所になっていたのか、ちょっとしたリビングくらいの広さはある。天井までの高さは結構あり、大人が立って歩けるだけの高さを有している。
 
 足元を見まわすと、木の破片が散乱していて、しかもずいぶんじめじめしているので、結構カビ臭い。少しその辺りを散策していると、隅の方に木の箱があったので、蓋を開けようと持ち上げたが、もろくも自重で、砕けてしまった。
中には皿が2〜3枚入っており、菊池さん、小野さんと「ここで昼食を摂っていたのか?」、「いつの年代の皿だろう?」などと話したあと、坑内の奥へすすんだ。

 坑内の所々に神社の鳥居にも似た形の木の補強材が入っているが、やはりかなり朽ちている。入り口付近がかなりひどく、潜っていくのが一苦労である。
 坑内の構造は、まず1本の基本となる横穴があり、あとは、そこから鉱脈に沿って掘られているようで、袋小路が所々にあり、蟻の巣に似た感じもする。坑内道の一部分が、絶壁の上で開口部となっており、そこから見えるチンネ方向の景色は、特等席で、とても素晴らしかった。
 
歩いていると赤茶色の壁の中に、銀色の筋が坑道に沿ってあることに気づき、これは何なのかと尋ねたところ、モリブデンの鉱脈だとのことだったが、金鉱脈でも発見したかのように嬉しかった。
 途中、モリブデンの鉱石を剥離した痕を見て、どのように採掘され、運搬し、利用されたのかを想像しながら、その事を語っているだけで、謎解きをしているようで、楽しかった。
 
「埋められた坑道」、「刺さりっぱなしのクサビ」、「わけの分からない竹製器具」、「3枚の皿」、「倉庫内のダイナマイト」、「岩の隙間から流れ出る水」、そして「見放された鉱山」と謎解きの材料はこと欠くことはなく、その謎を解こうとすればするほど、深みにはまってしまう。そんなところがまた面白かった。また、チャンスがあればぜひ参加したいと思った調査でした。    
”注”
1、 採集された3枚の皿(完品)は、調査の結果、戦前期の美濃焼きと判明した。
2、 坑内には、滝のように水が流れ出ているところが一ヵ所ある。7月ころの湧出量は大変な量で、   おおよそ、数秒でドラム缶一杯になると予想される。秋になると暫時少なくなる。
3、 採掘が終った枝坑道には、ズリ(不純物の岩石)が充填されているところが何箇所かあった。掘   り終わった後の、坑内の強度、安全確保のために充填されたものであろう。

 寄稿者は身長182cmの長身で、19歳から池の平通いをされている。
 1999年、会報用に寄稿