2018・5


  2018年中小企業白書にみる現状と課題!

   人手不足、労働生産性、事業承継!
    中小にも広がるM&A
   急務!小規模経営者の業務効率化

 

 2018年坂中小企業白書が発表されました。今年はアンケート調査結果に併せて、事例を豊富に紹介。中小企業の生産性向上に向けたヒントを提供する実践的な白書となっています。



【中小企業の動向は?】


閣議決定後に公表!
 今年の中小企業白書が先月20日に閣議決定され、中小企業庁から公表されました。

<中小企業白書とは>
 中小企業基本法に基づいて政府が毎年国会に提出する「中小企業の動向及び政府が中小企業に関して講じた施策に関する報告」略称。
 1964年3月以来、毎年、中小企業庁が国会に提出する。内容は最近の中小企業の動向、課題、当年度の中小企業施策などからなる。







今年のテーマは「生産性革命」
 半世紀以上の歴史を持つ中小企業白書は経済白書のようなサブタイトルはないものの、今年の第2部は「深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命」。過去の白書をみると次のように。

2009年版 中小企業を巡る経済金融情勢 (リーマンショック)
2012年版 潜在力の発揮と中小企業の役割 (震災復興)
2016年版 中小企業の稼ぐ力
2017年版 中小企業のライフサイクル (起業・事業承継)






そもそも「中小企業」とは?
 
<中小企業の典型像はかなり小規模>
 我が国の中小企業は2014年時点で約381万社と企業数全体の99.7%を占めており、従業員数は雇用全体の7割を創出している。我が国経済の屋台骨を支えている中小企業は多種多様なビジネスを展開しており、一様には捉えられないが、一般社団法人CRD協会のデータによると、日本の中小企業の典型はかなり小規模と分かる。
 ●従業員3名  ●売上高6,790万円  ●経常利益160万円
 ●総資産5,420万円  ●資本金510万円





大企業と比較すると・・・?
 企業数、従業員数は圧倒的な割合を占めていますが、付加価値額(労働生産性)の面から見ると大企業の存在が大きいことが明白です。付加価値額の約45%は企業数0.3%の大企業が稼いでいて、中規模企業は約38%、小規模事業者約16%。1人当たりでは中規模企業で約1.8倍、小規模事業者で2.2倍の格差。








中小企業の景況感は改善傾向!
 中小企業の経常利益は過去最高水準、景況感も改善傾向で都市と地域間のばらつきも縮小。

<売上は大企業との格差が縮小>
 2011、12年と減少傾向が続き、13年第1四半期以降横ばいが続く。16年第3四半期に海外経済の復調等を背景に増加に転じ、17年を通じ約5.4兆円ぞうかし、大企業との差が縮小しつつある。








最高水準でも格差広がる!
 経常利益は統計開始以降過去最高水準で推移し、大企業のみならず中小企業へも経済の好循環が浸透していますが、格差は広がる傾向に。







企業数と従業員数の推移は?
 

<小規模小売は15年間で4割減少>
 企業数では小規模企業が減少しており、業種別では小売業が減少。2009年から14年では、1984年以前に設立した5人以下の企業が大きく減少し、業歴が長い小さい会社の減少が目立つ。
 従業員数は1984年以前設立した企業が大きく減少し、2005年以降に設立した企業が大きく増加。業歴の浅い企業が多くの雇用を創出している。







倒産は9年連続の減少!
 直近10年間、増加傾向だった休廃業・解散件数も足元では減少、倒産件数は9年連続減少へ。
 













【中小企業の生産性向上】


 人手不足の深刻化と生産性
 中小企業を取り巻く状況は改善傾向にありますが、人手不足の深刻化、労働生産性の伸び悩み等の課題も抱えています。「今後、更なる人口減少が見込まれる中、我が国経済の成長のためには、中小企業が労働生産性を高め、稼ぐ力を強化していくことが重要」としています。






 大企業との生産性格差は拡大!
 従業員1人当たりの付加価値額(労働生産性)を見ると、大企業はリーマン・ショック後大きく落ち込みますが、その後は総じて回復傾向に。一方、中小企業は一貫して横ばいで推移し2009年以降、従業員1人当たり付加価値額の格差は広がり続けています。







 生産性向上に向けた取組み急務!
 生産性向上では大企業に依然遅れをとっていることを指摘し、中小企業は設備投資やIT活用等で追い上げを図るべきだとしています。

<生産性向上のための具体的取組み>
●業務プロセスの見直し
  設備投資やIT活用を進める上で、業務プロセスの見直しが必要
●人材活用面での工夫
  多能工化・兼任化の取組みやアウトソーシング活用、人材育成など
●ITの利用や活用
  効果やコストが課題。財務会計と給与管理などデータの連携も重要。
●設備投資による省力化
  設備投資は増加基調








 生産性向上の鍵は「業務見直し」
 生産性向上に向けた取組みは、業務プロセス見直しと併せて実施することで一層の効果が。





 M&Aを生産性向上の視点で!
 今まで後継者難や事業承継を背景に、選択肢の一つとしてM&Aが取り上げられていましたが、今年は「中小企業同士によるM&Aが生産性向上に有効」としています。M&A実施企業が付加価値を向上させ、労働生産性の向上を図っていることが分かります。

<60歳以上の経営者48.7%が後継者不在>
 経営者の高齢化が進む一方で、後継者・後継者候補のいない企業においてはM&Aが事業承継の選択肢の一つとなっている現状がある。








 事業承継を背景にM&Aが増加!
 M&Aの相手先を見つけたきっかけは金融機関等の第三者からの紹介が多く、マッチング強化が今後の課題のようです。






 M&Aをきっかけに付加価値向上
 

<事例> シナジー効果で売上・収益向上
●計測機器等の開発設計・製造会社。
  従業員100名、資本金1,000万円(三重県)
●大企業で継続できない事業や倒産企業、後継者難の企業で
  自社と親和性の高い事業を3社から取得。
●取得した技術と自社技術とを組み合わせてシナジー効果を発揮し、
  新たな計測機器・分析機器を開発。
  グループ全体の売上・収益向上につながっている。










【小規模企業白書も注目】


 4年前からスタート!
 中小企業白書と同時に、小規模企業白書も公開されています。4年前からの公開開始なので知らない方もあるかもしれませんが、中小企業より小規模(従業員5人以下、製造業その他は20名以下)の企業に焦点を当てた白書です。中小企業の現状を見るにあたり、調査対象の8割は小規模企業でもあり注目を集めています。








人手不足で経営者に業務が集中!
 人手不足感を感じている事業者を対象に、人手不足への対応を聞いてみたところ、「経営者の労働時間を増やし対応」が3.9%と最多。

<人手不足は社長の働きでカバー>
 新規採用や人材育成が難しい小規模事業者は経営者自身の働き方でカバーしているケースが大半。






 間接業務の削減意識が高い!
 小規模事業者の場合、経営者が従事している業務は広範囲に渡ります。「削減したい業務」を聞いたところ、「「財務・会計(記帳)」、「在庫管理」、「給与管理・勤怠管理」といった間接業務を削減したいとする割合が高いことに。他方、「経営計画の策定」の削減意識は低く、経営者自身の業務として重視されていることが明確に。







経営者が注力したい取組みは?
 時間に余裕注力したい取組みを聞いたところ、「売上向上に直接つながる業務に注力したい」が58.7%で最も高いことに。業務を効率化すれば、経営者は生産性向上に直接つながる業務に注力できることが分かります。





 IT活用での業務効率化が急務!
 

<事例> 3代目が効率化と経営多角化を実践!
●業務67年の種苗店(長崎県・従業員3名)の3代目が代替わりの際、カフェを開店。業務多角化で業務量が増加したため、商工会議所の勧めでクラウド会計とモバイルPOSレジを導入、ネットバンキング連動で経理業務を効率化。
 
●効率化で空いた時間を活用し、種苗のネットショップを開始。SNSによるPRが功を奏し、売上向上。 
●クラウド会計は月額低コスト、レジ導入も補助金を活用!













     




       
自宅の8割評価減―“家なき子”に大きな改正が!
生活の土台に配慮
 小規模宅地の評価減は、亡くなった方の自宅や店舗用、貸付用の土地を最大8割評価減できる特例。自宅や個人事業など、相続人の生活の基盤となる不動産に過大な相続税をかけないための制度です。
 どの土地を誰が相続するとどれだけ評価減がとれるかは、相続人の状況で大きく変わるので、早めにシミュレーションし、対策を打っておきたいところです。

”家なき子”の改正ポイントはここだ!
 自宅の評価減を使える相続




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