2006・8


2004年高額納税者番付に見る世相あれこれ!

 

スーパーサラリーマン初の首位!
長者トップ3、世相映す!
高額公示も今年が見納めか?

 恒例の2004年分高額納税者番付か発表されました。注目は何と言っても、給与所得者初のトップ。番付から見えてくる今年のキーワードは、成功報酬、企業買収、起業家のようです。

<番付今年の傾向は>

公示対象4年ぶり増加!
 公示対象者(納税1000万円超)は、前年より2.3%多い7万5640人で、4年ぶりの増加です。1億円以上の納税者は869人で前年より125人増。うち、3億円以上は前年の85人から107人に増加。また、前年は2人しかいなかった10億円以上は6人に。

土地長者は過去最低に
 上位100名のうち、土地の譲渡益による「土地長者」は5人と、過去最少だった前年をさらに下回りました。
 株譲渡によるランクインは前年より4人多い33人で、うちM&Aで自社株を売った人が6
人。上場時の株式売却でランクインした企業創業者は2人です。

土常連29人が100位入り
 健康・美容分野は今年も好調で、昨年1位の健康食品販売業斎藤一人代表(56歳)が4位、化粧品と健康食品が好調なDHCの吉田嘉明社長(64歳)が6位と常連組を中心に17人がランクイン。パチンコ業界も常連の顔ぶれです。

ヒルズ族6人で一大勢力に
 今や東京名所の六本木ヒルズに自宅や職場を持つ「ヒルズ族」が6人ランクイン。

 54階建てのオフィスビル「森タワー」に入居する外資系証券の幹部や社員が4人、敷地内の高層マンションに住む会社経営者らが2人。納税額は合わせて何と25億3000万円!

長者も大幅若返り!
 30〜40歳代の8人が30位内(前年1人)に入り、顔ぶれが大幅に若返っています。納税額7億5000万円で14位の携帯電話向け情報配信会社安嶋幸直社長(32歳)はライブドア堀江社長と同い年。22位の不動産情報誌「CHINTAI」の斎藤茂会長(38歳)は昨年大証ヘラクレスに上場。

<トップ3それぞれの事情は>

世相を映すトップ3
 企業経営者でなく、サラリーマンが1位となるのは、長者番付が現行の税額表示になった1983年分の公示以降初めての快挙で、過去22年間でも12番目の税額。トップ3からは時代を反映するキーワードが見える?
く今年の番付上位3人とは?>
()は前年順位。敬称略。単位:万円

順位 氏 名 職業 納税額  キーワード
1(8) 清原達郎 タワー投資
顧問運用部長
369,238 成功報酬
2(−) 斎藤 成 消費者金融
ワイド全会長
120,152 企業買収
3(26) 柳井 正 ファーストリテイリング会長 108,393 起業家

推定年収100億円
 スーパーサラー」−マンの異名を持つ清原氏(46歳)。仕事内容はヘッジファンド(投資顧問会社)の運用部長で、一昨年の31位、昨年の8位から今年はついにトップに。

<カリスマ運用部長その経歴は?>
1981年東大卒。野村證券入社後、米スタンフォード大でMBA取得。モルガンスタンレーなど外資系証券会社を経て、98年「タワー投資顧問」入社、主に企業年金を運用する「タワーK1Jファンド」の運用責任者に。

会社収益の3分の2を稼ぐ!
タワー投資顧問は役員5人、社員10人で、うち4人が投資判断を行ない、運用資産総額は約2600億円。今年3月期の営業収益は前年の約3倍の約150億円、清原氏はその3分の2を成功報酬として受け取った計算に。

<自給が521万円?>
納税額の37億円あれば、国会議員に支給される約4200万円の約88人分が賄えることに。納税額から推定される年収は100億円超、時給(8時間労働、月20日勤務)に換算すると、約521万円を稼いだことに。

元本が6年で6.4倍に
 ヘッジファンド系の運用会社のファンドマネージャーの成功報酬は運用成果の2割程度とか。単純計算すると、清原氏は顧客に対し年間500億円もの運用成果をあげたことに。2003年には資産倍増の102%という驚異的な高利回り。6年前に運用開始したファンドは元本が6.4倍に激増とか。

ヘッジファンドとは?
「ヘッジ」には「守る」「回避する」という意味がある。ヘッジファンドとは、どんな市場環境でもプラスの運用実績をめざすファンドの総称で、1949年に米国のA・Wジョーンズがはじめたのが起源。「買い」のみの運用では、相場全体が下がった場合、影響を免れないが「カラ売り」を組み合わせて下落局面でも利益を出す手法。

独自の投資スタイル
 清原氏は、企業価値の高い割には安い銘柄を見つけ、必ず経営者に合って、成長性を見極めるとか。あまり知られていない銘柄に投資し、逆に成長産業には手を出さないとも。
 
<タワー投資顧問が手掛けた銘柄>

卑弥呼(婦人靴製造) アシックス商事(シューズ企画販売)
細田工務店(戸建住宅分譲) 藤久(手芸専門店)
オリジン東秀(弁当製造販売) 秀英予備校(予備校)

ジャパニーズドリーム時代?
 多くのヘッジファンド運用者は自分自身のお金もファンドに注ぎ込んでいるため、横並び運用に陥りにくいといいます。一部富裕層しか投資できなかったヘッジファンドも、最近では個人向け商品が続々登場。情報を素早く見極める人が巨万の富を得る時代の幕開け?

足利銀行の破綻で決断
 2位の消費者金融「ワイド」の創業者である斎藤前会長(60歳)は、同社を貸付残高940億円(04年3月期)にまで育てましたが、メーンバンクだった足利銀行が一昨年11月に一時国有化。資金繰りが苦しくなり、大手消費者金融「アイフル」の傘下入りを決断し、自社株を売却。

企業買収時代の到来へ
 購入側アイフルの福田吉孝社長も8位ランクイン。「大手の信用力で資金調達コストを下げたい」ワイドと、「関東・東北の営業基盤を強化したい」アイフルの戦略かT合致したM&Aといえそう。
 企業の売却益などで利益を得た「M&A長者」は上位100人中7人。攻めのM&Aも目立ち、本格的な企業買収時代の到来を感じさせます。

<上位100位内のM&A長者>

 順 位 氏 名 売 却 内 容
 2 齋藤 成 消費者金融「ワイド」株を売却。消費者金融大手「アイフルJlOO%子会社に
 10 田中孝顕  自己啓発用資材販売会社株を投資ファンドなどが設立した別会社に売却
 15 川辺泰男 老人ホーム運営会社「アールの介護」株を投資会社に売却(その後「ウダミ」が買収)
39 前田英仁 うどんチェーン経営会社株を売却。「吉野家ディー.アンド.シー」傘下に
40 山川雅之 「聖心美容外科」の商標権などを自動車販売会社「VTホールディングス」の子会社に売却
81 植村 秀 「シュウウエムラ化粧品」株を売却。化粧品会社「日本ロレアル」傘下に
100 石井良明 高級スーパー「成城石井」株を売却。焼肉チェーンなどの経営会社傘下に

配当倍増で32億円!
 上位100位にIT分野の起業家が目立つ中、ユニクロ創業者の柳井正ファーストリテイリング会長(56歳)が3位に躍進。同社は低価格フリースで急成長後、2001年をピークに成長が止まると、次は女性衣料に注日。2年ぶりの業績回復で配当は倍増。2800万株超を保有する柳井会長は配当だけで約32億円。

<今年話題の他の人々>

還付加算金でランクイン!
 大手パチスロ機メーカー「平和」の中島健吉名誉会長(84歳)は63位で、所得の大半は所得税の還付加算金という異例のケース。

89年 関連会社に平和株売却、購入資金約3450億円を無利子で貸し付け
 92年 約500億円の利息を認定、当時史上最高の申告漏れで、過少申告加算税を含む約269億円を追徴課税
中島氏、納税後、課税を不服として提訴
99年   東京高裁「利子の適用比率に誤りがあり、所得税9億1000万円と過少申告加算税1億5000万円は取り過ぎ」
 04年 最高裁は巨額の無利子貸し付けは不合理とし、国税は勝訴の判決で最終的に税額が決定、課税取り消しの10億6000万円が還付、さらに還付加算金も!

 納税時から12年経っており、還付加算金は地方税も含め約10億円に膨らんだようです。

還付加算金とは?
課税処分が取り消された場合、戻ってくる税金に応じて払われる利子に相当する。国税を滞納した場合に延滞税が課されるのとバランスを考慮したもの。
 旧住宅金融専門会社(住専)向け債権を巡る訴訟で勝訴した旧日本興業銀行(現みずほコーポレート銀行)に昨年約680億円が払われ話題に。
還付加算金は雑所得
 税金の還付金には、税法で定められた起算日から支払決定日までに期間に年7.3%(現在は前年11/30の公定歩合+4%)の還付加算金が加算される。雑所得として申告が必要。本税を借入金で納付している場合、その借入金のうち還付金に相当する額の支払利息は、雑収入の必要経費として控除できる。

再転入で離島大喜び!
 沖縄の離島に多額の税収をもたらしているユニマットグループの高橋洋二代表(62歳)は37位。高橋氏は2000年12月に宮古島の上野村の村民になったものの、約1年後、別の離島に転出。上野村の村民税は約2億4600万円から、4000万円に落ち込んでいたところ、昨年の帰村で村は大喜びとか。

ランク外は想定内?
 ニッポン放送問題で注目されたライブドアの堀江社長は納税額1391万円と意外に地味で100位ランク外。一連の騒動でビックマネーが動き、同社も利益を得たものの、これが反映されるのは次回分になりそう。

初の発表!日本の富豪40人
 米経済氏フォーブスが「日本の富豪40人」を初めて発表しました。こちらは納税額でなく、保有資産のランキング。堀江社長は6億4500万ドルで40位に最年少で滑り込み。
   く日本の富豪上位10人>  敬称略

 1 佐治信忠 サントリー社長  58億ドル
 2 福田吉孝 アイフル社長 57億ドル 
武井保雄 武富士前会長 52億ドル
糸山英太郎 新日本観光会長  49億ドル
 5 木下恭輔 アコム会長 47億ドル 
岩崎福三 岩崎産業会長  44億ドル
 7 毒島邦雄 SANKYO会長  43億ドル
堤 義明 コクド前会長  37億ドル
孫 正義 ソフトバンク社長  36億ドル
10 森 章 森トラスト社長 32億ドル 

初今年が最後?長者番付
 今回は「個人情報保護法」が全面施行されて初の高額納税者公示。自宅住所や納税額などがオーブンになる公示制度については、以前から廃止論が浮上。財務省では廃止を含めた見直しを検討しており、今年が見納めかも。

無関係ではいられない個人情報保護法−情報漏えい対策は大丈夫?!

個人情報保護法のおさらい
 個人情報保護法が今年4月1日施行され、「6カ月以上継続して」「5千人分以上の個人情報を取扱う」ものに対して、義務と罰則が設けられました。対象となる事業者は、(1)利用日的を特定し、(2)本人に利用目的を通知し、(3)本人の同意を得ること、(4)情報の安全管現こつとめ、(5)本人から求めがあれば保有する個人データを開示する こととなっています。
 法律上は、個人情報を事業の用に供している事業者が対象。またあくまで個人情報が対象で、法人の情報などは対象外となります。

どんな企業でも漏えい対策は必要

 とはいえ万一情報漏えい事故が発生すれば、つぎのような影響が発生することが考えられます。
1.コンプライアンス、(法令)詳反
2.信用の失墜
3.対応費用負担による特別損失
4.緊急の対策実施による業務効率低下
 つまり、個人情報保護法の対象となるかどうかにかかわらず、またその事故が過失によるものだろうが従業員のよる犯行だろうが、経営への影響は無視できないものになります。
 個人情報保護法の対象となるかどうかにかかわらず、この際社内の個人情報の状況をチェックし、漏えいへの対応策を図っておく必要があるといえましよう。

<プライバシーマークとは?>
 社内の情報管理の手順をルール化して書類にまとめて申請取得するもの。ルールどおり運営されているかどうか定期的な調査が入ります。マーク取得には下記のような情報漏えい対策が必要となるため、マークを取得していれば、情報管現こ関して安心感を
与える効果があるとされます。

どこでも起こりえる情報漏えい事故
○売場のレジからクレジットカード伝票を紛失 
○封入・発送の手違いであて先を間違えて資料を送付
○プリントアウトして自宅に持ち帰った顧客名簿をゴミ収集に出してしまった
○車上荒らしによる営業用ノートPCの盗難
○メールの誤配信でメールアドレスが流出
○サーバーのセキュリティ設計ミスで情報流出
○ウィルス感染でサーバー内の情報流出
○バイク便の転倒事故で書類が散乱
○不要なPCの処分を回収業者に依頼したとこ
ろ、顧客データが消去されずに流出
○従業員がカード情報を引きだし

原因は大きく4つ!
☆情報の取扱方法    ☆外部委託
☆情報システムの問題 ☆内部者犯行

情報漏えい事前対策のポイントは
1.社内体制の整備
 責任者を決め、社内体制を整備します。社内にある個人情報を洗い出し、会社としてのどう取り扱うのかの方針を決め、日々の運用を具体的にルール化します。ルール通り運営されるよう、社員教育やチェック体制を整備します。
2.取引先等との体制確認
 社内の制度にもとづき、取引先・外注先・委託先・出入業者など社外関係者と情報管理について方針を確定させ、関連する契約書類などを整備します
3.ハード面での対策
 個人情報を管理するサーバーへのアクセス制限やセキュリティ強化など、システム面の対策を実施します。たとえば、個人情報を扱う区画を実際のオフィスの中で分けてしまい、物理的に入れる社員を制限してしまうという方法も。

事後対策としての保険
 万一事故が発生してしまった場合の対策としては、「個人情報漏えい賠償責任保険」が考えられます。
 ●損害賠償金、訴訟費用、●法律相談費用、事故対応費用、●広告宣伝活動費用、●漏えい対策のためのコンサル費用、●見舞金、見舞品購入費用 など事故後のコスト負担は大きく、これらを補償する保険です。コンピューター・ウィルスによる損害を補償する特約もあるようです。
 新しい種類の保険のため事故発生率などが確定しおらず、保険料とコストが見合うかどうかの判断は難しいところですが、企業によっては加入しておくのもー法でしょう。(日商、東京商工会議所、全国中小企業団体中央会などで取扱い中。)