01年11月21日撮影

 


「であい橋」

 昨年の秋、白川郷に訪ねた時の話である。「出会い橋」のたもとで、白川郷合掌村の情景を水彩で描いて、並べて売っている人がいた。興味深そうにその絵を眺めていると、
「白川郷初めて?」
と声を掛けてくれた。
「いや、今年3回目。写真撮るのが楽しくて。」
それがきっかけで、「絵描き」と延々2時間、お互い好きな煙草をふかしながら、いろいろと話をした。絵の話から、写真の話、白川郷の話、はたまた、景気の話、政治の話などなど・・・。
 白川郷に通いつづけて約4年。こうして思い立った時に白川郷に来て、絵を描き、こづかい、いや生活費を稼いでいる。そして白川郷を中心にしていろいろなところに出向き、絵を描いているとのことである。
 彼は何十年も絵を書き続けているが、なかなかチャンスに巡り合えない画家。私は、カメラを手にしてまだ間もないアマチュアの駆け出し。彼はそんな私でも、いろいろ語ってくれたし、話も聞いてくれた。
「風景を切り取って、作品にする」絵画の世界も、写真の世界も通ずることのたくさんあったし、共感できることもあった。

 話をしている中、観光客が何人もその絵を覗いていく。その中にブランド品のバックを持った観光客がいた。彼はこういった。
「あのブランド品のバックを持った人、ああいう人は絶対、この絵なんか買わないよ。よく見てごらん、バックはブランド品でも着ている衣装、バックに全然合っていないんだよね。どっかのスーパーのバーゲン品だろ。こういう人はいっくら相手しても絶対買わないよ。」
「こないだ、金バッチつけた人がこの絵を見て、こう言ったんだ。『こんな小さい水彩画が二千円もするのか!?』こんな政治家がいちゃ、日本もよくならんな・・・。」
「価値観」の話である。

 一番印象に残った話、
「白川郷はもう四年以上も書き続けている。白川郷のいいところも知っている。しかし、“勝負”の作品は白川郷では書かない。ここでは、いい作品を描くことが出来ないだろう。なぜなら、ここのいいところ以上に悪いところを知ってしまったから。」
 絵にしろ、写真にしろ、「人の心」で描写するもの。それが澄んでいなければ、良い作品は残せない・・・。

 別れ際、絵葉書大の画紙に、一緒に座って話ながら眺めていた山の稜線を30秒ほどでササッと書いた。
「これ持ってって」

 嬉しかった・・・。

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