●スピードメーターのお話

 名鉄パノラマカー、運転室を2階に上げ、その階下を客室展望席にした名車であり、その展望席は老若男女問わず人気だ。鉄道ファン、こどもはもとより、サラリーマンも「たまたま空いていた席が展望席だ」という顔で、行き交う景色を楽しんでいるし、女子高生も「いちばん前が空いているー!」と連れ立って席に座りに来たりする。おばさま方も「いちばん前はいいわねぇー」と世間話をしながら楽しんでいる。
 私もパノラマカーに乗車すると体が自然に展望席に向かう。この行動は幼い頃から変わらない。いわば「習慣」に近いものがある。指定席を購入する際も「いちばん前、下さい。」とお願いする。
 それと「展望席」には、もうひとつ「楽しみ」がある。それは「スピードメーター」だ。流れ行く景色の中、ふと、スピードメーターに目を移すと100k/mを越している。幼い頃は「100k/mだー!」と大喜びしていたものだ。また、98〜99k/mまでいくのだがなかなか100k/mに届かないと、何故か思わず力が入ってしまう。
 パノラマカーのスピードメーター、現在は白帯車、白帯車格下車にデジタル式が備わっているが、昔は「光電管(ニキシー管)式速度計」というスピードメーターだった。「只今の速度」と上部に書いてあり、その下に、表現は的確でないかもしれないが、0から9までの数字が光って浮き出てくる感じのものである。

 幼い頃、パノラマカーに乗車すると、必ず、「前に行く!」と言って、親の手を引っ張って展望席に向かう。展望席にあるスピードメーターの数字が“ピコピコ”変わって行くのを見るのが、景色を眺める以上に楽しくてたまらなかったものだ。
 幼心、密かに楽しみにしていたスピードメーター、「前に行くー!」と喜び勇んで展望席に行ったものの、スピードメーターがあるはずの場所には「成田山」のお守りが。「なんでこのパノラマカーにはスピードメーターがないの?」と親に文句をいっていた。7000・7500系の初期車にはスピードメーターは備わっておらず、文句を言っていたパノラマカーは初期車だったらしい。

 「前に行くー!」と喜び勇んで展望席に行ったものの、スピードメーターが“壊れて”いたものもあった。速度が表示されていないのだ。「成田山」は諦めがついたものの、壊れて速度計が光らないパノラマカー、「いんちきパノラマカー」といってこれまた、親に文句を言っていた。この「光電管(ニキシー管)式速度計」はよく故障したらしい。電気玉が切れるのと同じで、例えば「3」という数字だけが光らないものもあったりした。そして“壊れた”スピードメーターはいつのまにか「禁煙」に変わって行った・・・。

(写真・中:ND502氏)

目次に戻る