●7300系との再会

 7300系は、私の好きな車両の一つである。1971年に支線直通特急用として、800系、3800系の台車、機器類を流用して作られた車両で、足回りこそAL車なのだが、ボディは7000系に準じた車体で7000系と同じく転換クロスシートが並んだ「豪華AL車」だった。
 当初は三河線等の支線区へ直通する「特急」と使用されていたが、7000系、7700系が増備されてからは一般のAL車と併結されながら本線系の「ローカル」で長らく活躍した。当時、本線で走っていたAL車の唯一の冷房車だったため、特に夏、4両もしくは6両のAL車編成の列車が来て、7300系が編成内にいると、走って7300系の車両に移動、乗車したものだった。普通列車ユーザーの私にとっては大変重宝し、お世話になった車両であった。
 しかし、本線系のAL車が淘汰・廃車が始まると、7300系も見た目はパノラマカー、しかし中身は悲しいかな、AL車。他のAL車同様本線系からは淘汰される。ところが、冷房車だったのが幸い、他のAL車が廃車される中、小牧・各務原線などのローカル線で細々と活躍していた。
 97年夏、豊橋鉄道が1500Vに昇圧することになった。そして7300系が豊橋鉄道に譲渡が決まり、平成9年4月5日の改正で名鉄路線から姿を消した。

 7300系、見かけなくなって久しくなる。そこで、98年9月26日、7300系に会いに豊橋鉄道に出向いた。
 豊橋鉄道に乗るのは約10年ぶり。7300系の活躍ぶりはいかがなものか。
新豊橋駅で待つこと数分。来た来た7300系。

アッキー『やぁ久しぶり!元気かい?』
7300『久しぶり〜!!元気だよ!!何年振りかなー?』
アッキー『常滑線で見かけなくなって以来だから十数年ぶりだよね。』
7300『そだね。どう、新しい衣装、似合うでしょ?』
アッキー『・・・ヘン!スカイブルー色に、なになに「なぎさ号」だって!?なんじゃーそれ!』
7300『そう、言うなよ。俺は特別なんだから。』
アッキー『そかそか。んじゃ、中に入れてもらうよ。』
7300『どーぞ!昔となんも変わってませんけど。』
アッキー『ホントだー。なーんも変わってない!いやー懐かしいねーこの赤のモケット。先輩のパノ君はもう赤のモケットなくなったからねー。』
7300『・・・心機一転、新しいのにして欲しかったんだけど...』
アッキー『いいじゃん、いいじゃん、まだまだ使える!』
7300『豊鉄の人もそう言ってた。』
アッキー『おっ、そろそろ発車の時間だ。懐かしい君の走りっぷり、見せてもらうよ。』
7300『オーライ!出発進行!!』 (釣り掛け音。ウィィィン〜)
アッキー『いやーこりゃまた懐かしいねー!そのサウンド。(しばし、酔いしれる)』
アッキー『お、おい、もう「OFF」かいな?』
7300『しゃーないじゃん、もう駅なんだから。』
アッキー『...。もっと、勇ましい加速音聞きたかったのに・・・。』
7300『実言うと、俺も欲求不満気味でさー。本当は、昔みたいに高速走行でブイブイいわせたいんだけど...』
アッキー『君の気持ちもわかるけど、今の名鉄じゃ本線系統ではついていけないよ。』
7300『.....』
アッキー『そう落ち込むなって!こうやって走れるだけでも幸せだろ?先輩のパノ君だ って引退する時代なんだから。』
アッキー『ところで、どうだい、お客さんの評判は?』
7300『うん、なかなかいいみたいだよ。ちょこっと速くなったし。なんてったって、一番は、やっぱ‘涼しい夏’さ!』
アッキー『良かったじゃん、お客様に喜ばれて。』
7300『そうさ!俺、まだまだ元気だもーん!』
アッキー『その意気、その意気。まだまだ、頑張れよー。おっ、もう降りる時間だ。今日はありがとなー!』
7300『いえいえ、こちらこそ。わざわざ会いに来てくれて。パノ君はじめ、元同僚によろしく伝えといてー!』
アッキー『おう、わかった、わかった。また来るからいつまでも頑張れよー!』
7300『ありがと。またねー!』
アッキー『おぅ。んじゃ!!』

(写真・上:ND502氏)

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