●名鉄乗りまわしミニトリップ -98年7月-

 夏休み、「名鉄」は「スタンプラリー」という催しを開催している。900円の「スタンプ帖」を購入し、一日乗車券1300円を購入。100駅のスタンプを集めるという企画だ。(註1)「スタンプ帖」を持っていれば、スタンプラリー期間内なら1300円の一日乗車券を何度でも購入できる。
さすがこの歳になるとスタンプを集めようという気力はなくなるが、「ビジネス」「行楽」(片道650円以上の時)にも使用できそうで、重宝しそうだ。
 98年7月25日、久しぶりにまとまった時間が取れたので、この「スタンプ帖」と「一日乗車券」を購入して「名鉄乗りまわしミニトリップ」に出かけた。

 「一日乗車券」だから、行先は敢えて決めていない。気ままに行きたいところへ行こうと思う。 
 取り敢えず、太田川から(急)常滑行に乗車する。電車は3分遅れで発車。先頭車両で景色を眺めることにする。遅れのせいか、尾張横須賀、寺本等格停車駅での「ブレーキング」は、ギリギリまで引っ張っているようで、「おいおい、きちんと停まれるかよー」っていう感じでヒヤヒヤする。案の定、朝倉駅では停車位置より約3mオーバーランしての停車。古見〜新舞子間の長い直線では、めいいっぱい飛ばし、車端のスピードメーターを見たら113キロを指している。常滑線の最高速度は110キロのはずだったが。 各個所の「制限」と「スピードメーター」と照らし合わせながら観察してみると、各個所約3キロ程オーバー、必死に遅れを取り戻そうとする「努力」が伺える。
 その甲斐あって、終点常滑に着く頃は、遅れ2分になりそうだったが、駅手前、構
内信号につかまり、結局3分遅れのままで常滑に到着した。

 常滑から「北アルプス号」の間合いで使用されている気動車特急「金山行」に乗車する。側面の「方向幕」は「特急・金山」と表示されているが、先頭部の「北アルプス」の表示は固定されているのか「北アルプス」を掲示したままだ。
 わずかなお客を乗せて発車。案内放送の前のオルゴールはなんとJR東海のオルゴールをそのまま使用。JR東海のオルゴール、JR特急に準じた車内設備、気動車サウンドを耳にしながらワイドビューな車窓を眺めていると、いつもの景色と違って見えるのは不思議だ。
 軽快なJR東海のオルゴールに促されて、神宮前下車。ホームに降りて「あー、今、
名鉄に乗っていたんだ」と我に返る。

 神宮前から、名古屋本線に乗り換え、知立下車。知立から、三河線海線に乗車する。三河線に乗るのは、私が名鉄全線完乗に情熱を燃やしていた中学生の頃以来だから実に十数年振りの乗車になる。それ以来の乗車だから、沿線の風景・状況はほとんど覚えていない。
 碧南までは、名古屋からも直通電車が走っているので、常滑線と同等の「線路・路盤レベル」を想像していたがそれは、刈谷市駅まで。その先は、単線で何キロレールというのか分からないが、レールも悪く、よく揺れる。乗換駅の碧南駅も、想像とは全く相反するものであり、駅前は閑散、駅舎もホームも地方のローカル駅そのものだ。そういえは、お客さんは碧南駅のひとつ前の駅「碧南中央駅」でほとんどが、下車した。駅名のとおり、碧南中央駅が「碧南市」の中央の駅のようだ。駅横には、ユニー碧南店もある。しかし、市の中央駅なのに単線片面1線ホームとは、いささか寂しい。

 碧南からは「レールバス」に乗り換え。僅かなお客さんを乗せて発車。当然ワンマンカーで女性の声のテープ案内が流れる。その後に運転士も肉声で案内を付け足す。動作を観察していたが、なかなかテキパキと業務をこなす若い運転士だ。
 しかし、碧南〜吉良吉田間の線路状況はひどい。道床砂利は、草に覆われて砂利が見えない所さえもある。そんな線路を見ていると、つい何年か前までAL車や6000系などが走っていたとはとても想像がつかない状況だ。
 途中、矢作川の鉄橋を通ったが、単線で橋柵もない長い鉄橋で目を見張るものがあった。
 そんなひどい線路状況の中、レールバスは右へ左へと揺れながらトコトコと走っているのだが途中、パッと新線高架が現れた。確か寺津駅前後だったと思う。また、理由はよく分からないが新線切り替え工事を行っている所もあった。「廃線」といつ言われても不思議ではない路線だが、このような工事等行っているということは、「まだまだ頑張りますョ」と語っているようでなんとなくホッとする。
 レールバスに乗ってから約30分、吉良吉田の駅に到着した。

 吉良吉田から蒲郡行の「ワンマンカー」に乗車。6000型正面には「西尾〜蒲郡ワンマン」というサボが掲げられていた。乗務員扉は開放されていて、そこには「料金箱」が置かれている。他のワンマン列車、バスと比べて何か足りないなと思ったら、整理券発券機がないことに気づいた。
 車内は結構込んでいる。乗客の出で立ちを観察すると、どうも競艇客らしい。案の定「蒲郡競艇場前」で多数下車した。
 「ワンマン運転が始まってから三ヶ月余り。乗客は、ワンマンカーに大分慣れたのか戸惑う乗客は少なかった。
 行違い駅で電車は「右側線路」に進入した。基本的に列車は「左側」通行なのに何故
?と疑問に思ったがワンマン運転士の動作でその疑問が解けた。運転席は左側にある。その駅は島式ホームであるため、もし、右側線路に進入し、停車するとドア操作はわざわざ運転士は席を立ってドア開閉を行わなければならない。そのための配慮を考えて、あえて左側に進入したのだと考えたのだが。
(註2)
 ワンマンカーの定番の「案内テープ」だが、蒲郡線は男性の声である。いままでいろいろなワンマンカー(列車・バス)に乗車したが、男性の声の案内テープは初めてだと思う。とても聞きやすく、「重み」があり、好感が持てた。

 蒲郡を往復し、再び吉良吉田へ。そこから(特)佐屋行に乗車する。電車は8800系
「パノラマDX」。道中、碧南駅で「3号車1番D席」を既に購入している。
 電車が到着。早速車内に入る。パノラマDXの展望席に乗車するのはデビューしたときに乗車して以来だから、実に14年振りになる。犬山線に走っていた頃、何度かDX自体は利用したが、その時は「ロマンス席・サロン席」ばかりであった。
 期待しながら展望席に入ったのだが、14年前初めて乗った時の感動は、掻き消されることになった。展望席一番前の座席はいわゆる「ベンチシート」。シートの座り心地も硬く、背もたれも低い。シートモケットは張り替えてあったが、以前の高級感もなく、確か以前あった「ヘッドレスト」もいつのまにかなくなっている。おまけに枕カバーもひとりひとり独立したものではなくふたり分、連結されたものである。
 後継のパノラマスーパーと比較するのも酷だが、乗り心地、設備(リクライニング)等スーパーのが数段上だ。楽しみにしていたパノラマDXの展望車乗車だが、なんだか空しさみたいなものが残ってしまった。
 我が国初のハイデッカー展望車、豪華な車内設備、ブルーリボン賞にも輝いた「パノラマDX」だが、これも時代の流れというもの。最近の車両と比較して見劣りするのも仕方あるまい。
 「高校生の時、想いを寄せていた彼女に、同窓会で十数年振りに会ったが、会わなければ良かった」なんてことと似ているよなぁ〜、と、缶ビール片手に帰路に向かった。

(註1:98年の場合。年によって内容・期間・駅数等多少違う)
(註2:後から知ったことだが、蒲郡線は昔から「右側」線路進入だったらしい)

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