●名鉄ぶらり旅 -98年8月-

 ヒマが出来たので、ぶらりと出掛けようと思う。今日は、8月15日。夏休みで「スタンプラリー」という催しを開催しているのに便乗し、1,300円の一日乗車券を購入して出掛けることにする。今日は、ただ乗るだけではなく、ビデオ撮影をも行おうと思う。

 ビデオカメラも持ってどこに出掛けようか。「犬山橋」で「北アルプス号」の撮影をしたい。犬山橋は、現在の橋に平行して新しい橋を建設中で、近い将来、車と電車が同居して走る姿が見れなくなる。その姿を「北アルプス号」で収めたいと思う。また、久しぶりに「谷汲線めぐり」もしたいと思う。
 出発は「北アルプス号」に合わせた時間帯になるので、遅めの出発になった。
 神宮前に11:02に降り立ち、ここで、金山行特急「北アルプス車両」を待つ。「北アルプス号」として高山に行く前に、常滑へ「間合い運用」で使用されている列車である。
 神宮前の豊橋寄りホーム先端は常滑線から来る電車の全貌が撮影できるので絶好のポジションだ。金山行特急「北アルプス車両」を待つ間、神宮前入線の電車を撮影する。
 神宮前11:10発、常滑行特急は7000系の白帯車だった。ホームの案内放送で「競艇客のお客様は1号車から3号車にご乗車下さい」と案内がある。ということは、一般客は4号車のみということなのか。もっとも、時間帯から見ると一般客は1両のみで十分対処できる。
 常滑行特急が出た後、回送電車が入線する。これも7000系の白帯車だ。しかしよく見ると長い。8両編成オール白帯車だ。最近、めっきりお目にかかることがなくなった8両白帯車。全貌をビデオに収めながら見送る。4両+4両重連の白帯車は「美しい」。回送とはいえ、8両編成白帯車が見れるのは、いつまでのことなのか。
 11:17、金山行特急「北アルプス車両」がやってきた。「おや、これまた、長いぞ!」4両編成である。お盆輸送の措置として増結しているらしい。3両だと「短いな」と感じるのに1両増えただけでこんなに「見た感じ」が変わるものなのか。
 「北アルプス号」に先回りすべく、神宮前11:21発、新鵜沼行特急に乗車。4両編成の「北アルプス」を犬山橋で待つとしよう。

 神宮前11:21発、特急新鵜沼行に乗車。席は4号車12A番、展望席で前から3列目である。さすが今日は「お盆」であるため、「いちばん前」は取れなかった。車内は、見事に家族連ればかり。小さい子供がキャッキャッと喜んで賑やかだ。新名古屋を過ぎて、空いている席に父子連れが座った。検札の時に「席を変わった」旨、話してる。きっと、子供にせがまれて、たまたま空いていた席に移ったのだろう。子供は、大喜び。なんだか自分の小さい時を見ているようでほほえましい。
 多少、喧しいかなとは思うが、ここは「子供たちの夢を与える場」なので、温かく見守ることする。自分が子供の時も同じことをしてたんだから。
 今日は前から3列目でよかったと思う。この状態で、いちばん前に座っていたら、子供たちに恨まれかねない。展望席は子供たちが楽しそうにかぶりついているのがいちばんよく似合う。

 展望席は運転士の称呼の声がよく聞こえる。新米運転士と指導運転士の二人乗車なので、新米運転士はマニュアル通り、大きな声を出して称呼している。
 西春と布袋でミュージックホーンを鳴らした。しかし、ホームを通過しきった際、途中で止めてしまい「尻切れトンボ」だ。どうせならワンフレームしっかり鳴らしきってくれれはなと思う。途中で止めるとどうも後味が悪く感じる。

 犬山遊園で家族連れは、見事に全員下車した。残ったお客は私、ひとり。子供たちを温かく見守っていた私も、ここはチャンスとばかりビデオカメラを取り出し、犬山橋の走行風景を収めることとする。犬山遊園を発車。そろりそろりと動き出す。そしてお決まりのミュージックホーン。今日は車の量も多く、「そこどけ!そこどけ!」とミュージックホーンの連呼、鳴らしっぱなしだ。結局、鵜沼手前の専用軌道に入るまで、車との併用区間は鳴らしっぱなしだった。
 犬山橋で4両編成の「北アルプス」をはじめ、いろいろな場面から列車の走行シーンを収めることが出来た。ひとつ残念なのはパノラマカーの走行シーンが映せなかったこと。しかし、犬山遊園から新岐阜へ移動の際、パノラマカーに乗車することができ、パノラマカーからの犬山橋の走行シーンが撮れたから、良しとしよう。

 これから、谷汲線へ向かうべく、新岐阜駅前13:26発、黒野行急行に乗車する。電車は770形。市内線は何度乗っても、楽しいし、スリリングだ。よくもまぁ、狭い岐阜市内で車と共存できるなーと感心する。
 千手堂のカーブで電車とすれ違う。その時、一瞬目を疑った。510形重連!!行先は、「新岐阜」となっている。定期運用?そういえば、臨時に定期運用に就くこともあると聞いたことがある。
 慌てて、時刻表で折り返し時間を調べる。13:43に新岐阜前に着くから、折り返し13:56発、黒野行急行の運用に就くことは間違いないだろう。
 510形が定期運用に就いて走っているとは、思いもよらなかった。お盆のファンサービスか。はたまた、気まぐれ運用か。多分、後者だろう。ファンサービスだったら、「鉄道ファンカメラマン」が鈴なりになっているはずだし、今日は510形が走っているのに「鉄道ファン」らしき姿はどこにも見当たらない。
 忠節駅で待っていれば、30分後に510形はやって来る。しかし、どうしても路面を走る510形に乗りたい。果たせるかな、タクシーは忠節駅の改札を出たら目の前に待機していた。迷わず、タクシーに飛び乗り、「新岐阜まで」とお願いし、車を出してもらう。時計の時刻は13:45。新岐阜発が13:56だから微妙な所だ。車は順調に走っているが、新岐阜駅前の渋滞で遅れるかもしれない。間に合いそうだが、満を期して徹明町で降ろしてもらうことにした。
 徹明町発は13:58。送れること2分、赤と白のツートンボディの510形は徹明町の交差点をその大きなボディを揺らしながら左折してきた。その様子をビデオに収めながら乗車する。 千鳥に並ぶ転換クロスシートには、お客さんはまばらだった。先程通ったばかりの市内線を吊り掛け音を響かせながら、のっそりと走る。冷房がなく暑いはずだがそんなことはどうでもよい。
 忠節駅を発車し、先程の市内線の走りのうっぷんを晴らすかのように510形は専用軌道を「爆走」する。老体にムチを打っているかのように吊り掛け音を響かせている。「まだまだ元気じゃ」とも聞こえてくる。
 510形の走行に酔いしれながら、乗車して約40分。14:37定刻通りに黒野駅に到着した。黒野駅に着いた510形は、行先板が外され、お休みの準備を行う。本日はお疲れさんでした。

 黒野駅で510形と別れを告げ、谷汲線の750形に乗り換える。750形も510形に勝るとも劣らない「レトロ電車」だ。14:43、乗客6名を乗せた750形谷汲行は勇ましい釣り掛け音を響かせながら発車した。
 木製の床板から体の芯まで釣り掛け音が響いてくる。最初の駅黒野北口でひとり降り、その次の駅豊木でまたひとり降りて、残った乗客は4名。私と、鉄道ファン3名になった。実質的には、乗客ゼロである。その後、ワンマン運転士は途中駅に停車しても、後ろをチラッと見るだけで、ドアの開閉をしなくなった。
 やがて、電車は根尾川沿いに出る。川辺ではファミリーやグループがバーベキューや
キャンプを楽しんでいるのが見える。当然皆、車で、最寄駅の北野畑でも乗降客はいない。
 赤石駅は、ホームの横に墓地がある奇妙な駅だ。お盆ということもあり、お墓には供花が供えられている。こちらの地方の風習か、お花の他に「赤白縦縞模様」のちょうちんも供えられている。そういえば、道中、北方付近のお墓も同じだった。
 やがて、電車は細い林道のような木々に囲まれた線路を抜けて、谷汲駅に到着。ホームは昔のままだが、駅舎は新しく建替えられていて、昔の面影はない。谷汲線に見事に不釣合いな駅舎だなーと思いながら駅前に出ると、見事な駅前ロータリーが現れた。ロータリーの真中には「蝶」象ったモニュメントというか、塔が建っている。
 駅舎二階は「昆虫博物館」がある。果たして、谷汲線に乗って訪れるお客さんはどの
くらいいるのだろうか。
 昔、駅前の雑貨屋で切符を買った。そこは無人駅になってからの切符の委託販売を行っていた。その雑貨屋は跡形もなく、寂しい思いで駅舎に戻ると、駅舎の中に雑貨屋があり、切符も販売していた。記念に「谷汲から160円区間」の硬券を求める。
 折り返しの電車の発車時間が近づくにつれ、お客さんが集まってきて賑やかになって
きた。お盆でもあり、谷汲山華厳寺は賑わっているのであろう。乗客30名程乗せた電車は定刻に発車。それを見送り、せっかくここまで来たんだ。華厳寺でも参ることにしよう。

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