追悼

ヘルマン・プライ( Hermann Prey )
…1929年ドイツ生まれのバリトン歌手。

22日になくなったそうだ。69歳。

確かに亡くなってもおかしくない歳ではあるけど、…。私がはじめて好きになったオペラ歌手で、思い入れはかなりある。とても優しいバリトン。優しいお父さんのような声。それでいて芸術的な声。パパゲーノ役がハマリだった。フィガロも大好きだった。こうもりのアイゼンシュタイン、ヘンゼルとグレーテルのお父さん役。マイスタージンガーのベックメッサーは異色で良かった。

そして、シューベルトの歌曲。有名な「魔王」「野ばら」「ます」はメロディーはほとんどの人が知っている。こんなにドイツ歌曲が知られるようになったのはフィッシャー・ディスカウの功績も大きいが、同じくらいヘルマン・プライも活躍してきた。「冬の旅」の灰色の世界を「イモほりをした冬の畑」と似ていると言っていたのはよかった。「冬の旅」を、灰色に歌った人だった。歌だけで色のない世界を表現していた。

歳をとっても男っぽくて、カッコ良かった。コンサートで渡したコスモスの事は覚えていてくれただろうか。 クラシックのコンサートでは好きな歌手に小ぎれいな花束を渡す人が多いけど、いかにも「花屋さんに作ってもらいました」っていう様な花束はイヤだったので、そこら辺に咲いていたコスモスを渡した。この方がどれだけ歌が好きなのかが伝わると思った。握手した手は汗で冷たかった。
わざわざコンサートに行った歌手は彼だけだ。それも最前席(笑)

一席一万円!!

よく払えたもんだ。

オペラのファンでも、3テノールを代表とするテナー歌手のファンが多い中、バリトン歌手が好きというと、しかも60歳代のプライが好きというと「へ〜?」という反応をされることが多かったけど、こんなに良い声のバリトンは少ないからな。みんなそれでテナーに流れるんだろうなー。
フィッシャー・ディスカウの声がバイオリンのような研ぎ澄まされたバリトンとすると、プライはチェロのようなまろやかなバリトンだろう。でも、録音された声だけ聞いていても彼の歌声の良さは分からないと思う。ホールの隅々まで響きわたる(間近で聞くと耳からはみ出る)声の前には、日本で有名な鮫島の声もフツーの声に聞こえた。

最初に聴いた歌はベートーヴェンの「君を愛す」。
出だしの"Ich liebe dich"がとても優しい。ほんとに好きなんだなって、好きな人を想って歌っているんだなって感じた。

オペラでは、もちろんモーツァルトのオペラ「魔笛」のパパゲーノ。
これしかないっ。

でも、私の中でひとつ時代が過ぎてしまった・・。もう戻ってこないなんてウソみたいだ。
私の一番好きなオペラ歌手だったなあ。二度とこんなに好きになれる歌手はいないだろうな。・・・他にのめり込めることないかな。穴が開いたような気持ち。

ヘルマン・プライ、今までたくさんの歌を歌ってくれてありがとう。
やすらかに。