泌尿器科情報局 N Pro

症例027

解説

他院でHoLEPが行われたが、その3年後に下部尿路症状が再度出現してきた高齢男性患者さんです。

UDS

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1. 記録状況
膀胱内圧、腹圧はきれいに得られており、サブトラクションもおおむね良好です。括約筋筋電図はほとんど拾えていません。

2. 蓄尿期
Capacity 350ml
Compliance 良好
DO Normal Desire to void(ND)の時点で排尿筋圧の上昇があり、DOありです。ある程度我慢ができます。
尿意 First Desire to voidの前後でDOが出現してきておりすぐにNDを訴えています。そこから350mlまで我慢ができています。

3. 排尿期
Qmax 16ml/s
PVR 不明
Pdet 排尿開始とともに排尿筋圧は低下しています。排尿中も圧はきれいに拾えているのでカテーテルの不具合ではありません。
腹圧 排尿時に腹圧をかけて排尿を行っています。

ノモグラム

排尿筋収縮力 N-
下部尿路閉塞 I

PdetatQmaxで判定をすると、それほど排尿筋収縮力の低下はないことになりますが、排尿筋圧が持続しない点で、排尿筋低活動と判断されます。

UDSサマリー DO+ DU+ BOO-

HoLEP後の前立腺肥大の再発や尿道狭窄は否定されました。いわゆる加齢によるDHICと判断してよいでしょうか。DOがしっかり出現している割に膀胱容量の低下はなく、排尿筋圧がかなり早い段階で低下する点は、すこし神経系の障害を疑いたくなる所見なのですが、それは、私がその後の経過を知っているからいえることなのかもしれません。

経過
いったんは加齢によるDHICと判断し、タムスロシン内服にて経過観察となりました。
1年後に腰痛にて腰部脊柱管狭窄症が判明。整形外科で手術が行われました。

腰椎MRI

手術後のスクリーニングで残尿が指摘され、泌尿器科再診となりました。1回自排尿量50ml~200ml。残尿量100ml~250mlで推移。以前より残尿が存在していたことから、手術によって悪化しているわけでは無いと判断。やはり経過観察となりました。