泌尿器科情報局 N Pro

症例030

解説

馬尾腫瘍によって両下肢感覚障害がある男性患者さんです。

UDS 1回目

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1. 記録状況 座位で検査が行われています。括約筋筋電図はうまく記録されていません。膀胱内圧、腹圧はきれいに測定できており、サブトラクションも良好です。腹圧、膀胱内圧の細かい揺れは腹圧です。

2. 蓄尿期
Capacity 260ml
Compliance 良好
DO FDの直前から排尿筋圧の上昇が見られます。DO+と考えます。
尿意 DOの出現の後にFDを訴えています。その後すぐにNDを訴え、MaxCapも比較的速やかに訴えています。失禁はありません。

3. 排尿期
Qmax ごくわずかの排尿があっただけです。
PVR 正確な記録がありませんが、200ml以上の残尿があります。
Pdet DOでも30cmH2O程度までしか上昇しておらず、PdetatQmaxも25cmH2O程度しか上昇していません。
腹圧 40cmH2Oほどの腹圧をかけて排尿をしようとしています。

ノモグラム

排尿筋収縮力 VW
下部尿路閉塞 I

UDSサマリー DO+ DU+ BOO-

UDS 2回目

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1. 記録状況
1回目と同様です。

2. 蓄尿期
Capacity 1回目に引き続いて行われているため、capacityは残尿+40mlとなります。
Compliance 良好
DO FDをうったえるずいぶん前から排尿筋圧の上昇が見られます。DO+です。
尿意 DOの出現して少ししてからFDをうったえ、その後ND、SDとすぐに出現しています。

3. 排尿期
Qmax わずかですが排尿があり、2~3ml/s程度です。
PVR 正確な記録がありませんが、200ml程度の残尿があると思われます。
Pdet DOで25cmH2O程度の上昇あり。PdetatQmaxは20cmH2O程度です。
腹圧 腹圧はわずかにかけただけです。

ノモグラム

排尿筋収縮力 VW
下部尿路閉塞 I

UDSサマリー DO+ DU+ BOO-

2回ともほぼ同じ結果が得られています。自排尿で普段過ごしているため、通常は2回目の排尿パターンを繰り返していると思われます。

今後の方針ですが、残尿は多いものの、蓄尿器の膀胱内圧上昇はそれほど高く無いため、腎障害の危険性は低めであると思われます。よって、尿路感染の危険性がどの程度あるか、どの程度までその危険性が許容されるかが、残尿に対する介入の分かれ目となります。もっとも無難な方針は、間欠導尿です。上肢の機能に問題が無いため自己導尿が可能です。安全を考えるのであれば、導尿管理が望ましいことを勧めましたが、それほど困っていないとのことで受け入れられず、タムスロシン内服にて経過観察となり、現在も経過観察中です。