泌尿器科情報局 N

過活動膀胱とは

過活動膀胱とは尿を我慢することが弱くなった状態を言います。

正常であれば膀胱はおしっこをしようとする時だけ力を発揮します。膀胱が力を発揮すると膀胱は小さく収縮して尿を出そうという力が生まれます。それ以外の時間は、膀胱は脱力をした状態を保っていて、膀胱にしっかり尿を貯めることができます。通常では膀胱に尿がたまってくると、尿意と言って尿をしたい感覚を感じますが、尿意を我慢している間は膀胱は脱力した状態を保ち、膀胱が収縮してしまうことはありません。しかし、我慢ができない場合には、膀胱は勝手に尿を出そうとして縮み始めてしまいます。すると突然尿が出そうになってしまうため、急に尿をしたい感じも強くなります。この急に尿意が強くなる症状は、尿意切迫感と言って過活動膀胱の特徴的な症状です。

まとめると、過活動膀胱では、尿を我慢することが弱くなり、勝手に膀胱が収縮し、尿意切迫感をおこす状態を指します。

勝手に膀胱が収縮してしまうために、急いでトイレに行かないといけませんし、間に合わなければ漏れてしまうこともあります。何度もこのようなことがあると、早めにトイレに行っておいた方が安心ですので、トイレの回数が増えることになります。よって、過活動膀胱のために頻尿や尿失禁が起こるわけです。頻尿や尿失禁の原因がすべて過活動膀胱というわけではありませんが、過活動膀胱のために頻尿や尿失禁で困っている患者さんは大勢います。

過活動膀胱では、多くの場合膀胱が収縮を始めてしまうきっかけがあります。たとえば冷たい水で手を洗ったり水の音を聞いたりすると急に尿がしたくなる、という症状は過活動膀胱の患者さんでは非常によくある症状です。トイレの前を通ることで尿のことを考え始めてしまうと、もうトイレのことを忘れられずどんどん尿意が強くなっていってしまい尿を漏らしてしまうとか、トイレに近づけば近づくほど余計あせって失敗をしやすくなる、などということもあります。正常な状態の人でも、冬に寒くなると膀胱は小さくなり尿の回数が増えますが、過活動膀胱ではいっそう頻尿は悪化しやすくなります。

過活動膀胱の状態になってしまう原因は、代表的な病気としては、前立腺肥大症や脳梗塞が上げられます。なぜそれらの病気から過活動膀胱となってしまうのかは様々な推測がされていますが、本当の意味で発生のメカニズムは解明されていません。ほかにもさまざまな病気が過活動膀胱の状態を引き起こしますが、それ以上に重要な原因は加齢です。何も病気が無いと思われる患者さんでも、過活動膀胱の状態になってしまうことが良くあります。高血圧や糖尿病などの生活習慣病によって過活動膀胱になりやすいということも言われていますので、動脈硬化などが関係しているのかもしれません。また急に過活動膀胱になったりそれがしばらくすると改善したりすることが知られており、隠れ脳梗塞が過活動膀胱の発生に関係している可能性もあるかもしれません。まれには、膀胱がんや前立腺がん、脊柱管狭窄症など、重要な病気によって過活動膀胱が起こっていることがあるので、一度は泌尿器科を受診しておくと安心です。

人間はダメだと思うと何もできません。一度尿失禁を経験し自信を無くしてしまうと、次からダメだと思ってしまい、どんどんできないと思い込んでしまうことがあります。オムツをつけて安心してしまうと、もう間に合わなくても大丈夫かもと考え、尿を我慢する努力はどうしても弱くなってしまいます。年のせいだとあきらめるのは簡単ですが、少しだけ頑張ってみてはいかがでしょう。薬を飲んだり、自信をつけるためのトレーニング方法を指導してもらったりすることで、少しずつ我慢できるようになり、過活動膀胱を克服できる方も大勢います。