泌尿器科情報局 N Pro

下部尿路機能障害と下部尿路症状

「尿をためる機能=蓄尿機能」と「蓄尿障害」

正常では膀胱の中に尿をためておくことが問題なくできます。漏れることはありませんし、どの程度尿がたまっているかをある程度感じることが出来ます。蓄尿機能が障害されると、尿がたまる途中で我慢が出来なくなったり、漏れてしまったりしてしまいます。尿をたくさんためられず排尿の回数が増えてしまった状態を頻尿といい、特に夜寝ているときに排尿の回数が多くて困ることを夜間頻尿と呼びます。尿が漏れてしまう状態を尿失禁と言います。

「尿を出す機能=尿排出機能」と「尿排出障害」

正常では膀胱内の尿は好きなときに、すべての尿をスムーズに出すことができます。尿を出す機能が障害を受けると、尿を出すために時間がかかってしまったり、余計な力を入れないといけなくなったりします。尿の勢いが弱い事を尿勢低下、尿が何回か途中で止まってしまうことを尿線途絶、尿がなかなか出始めない事を排尿遅延、尿のし始めや途中にお腹に力を入れる必要があることを腹圧排尿などと呼びます。これら症状全般を含めて漠然と尿が出しにくいという症状を排尿困難と呼ぶことがあります。

機能の障害が強くなると、すべての尿を出し切れずに膀胱内に尿が残ってしまったり、まったく尿が出せない尿閉の状態となってしまったりします。排尿後に膀胱内に残った尿の事を残尿と言います。尿が出せないためにあふれ出るように尿が漏れ出る状態を溢流性尿失禁と言います。

障害と症状

蓄尿障害によって頻尿や尿失禁といった蓄尿症状が起こりますが、蓄尿症状だけしか起こらないわけではありません。蓄尿障害のためにたくさん尿をためる事ができないので、1回の排尿で少しずつしか尿が出せないという症状を訴える事があります。この少しずつしか出せないという症状は排尿症状(尿排出症状)にあたります。また蓄尿障害があっても蓄尿症状を患者ない患者さんも珍しくありません。つまり、症状だけから障害を診断することは難しいと言えます。

同様に、尿排出障害によって尿勢低下や腹圧排尿などの排尿症状を感じる事がありますが、必ずしも感じないこともありますし、排尿症状以外の症状を感じる事もあります。とくに、残尿がある程度ある患者さんでは、排尿後もすぐにまた尿がたまるため、頻尿となります。また残尿が大量になりあふれるように尿が漏れる溢流性尿失禁となることもあります。この場合、頻尿、尿失禁といった症状は蓄尿症状ですが、その原因は尿排出障害にあります。やはり、症状だけから障害を診断することは難しいのです。