泌尿器科情報局 N Pro

疾患と機能障害

下部尿路機能障害と下部尿路症状の関係は理解できたでしょうか。次は下部尿路機能障害の原因について考えてみましょう。有名な疾患としては前立腺肥大症があげられます。前立腺肥大症では、肥大した前立腺のために尿の通り道が狭くなって、尿が出しにくくなります。つまり、前立腺肥大症によって尿排出障害が起こり、それによって排尿症状が起こります。もし尿排出症状がひどくなると尿を出し切れず残尿が発生し、そのためにすぐにまた尿がたまるために頻尿となります。よって蓄尿症状も起こします。

また、前立腺肥大症では尿が出しにくいために膀胱に負担がかかったり、尿道の知覚が亢進したりすることで、膀胱が勝手に収縮しやすくなってしまいます。この勝手に収縮しやすい状態を過活動膀胱と呼び、蓄尿が十分できる前に急に尿意が出現することで頻尿や尿失禁の原因となります。過活動膀胱は蓄尿障害の代表的な状態であり、蓄尿症状の原因です。

よって、前立腺肥大症は尿排出障害と蓄尿障害の両方を引き起こし、そしてそれぞれの機能障害は、排尿症状や蓄尿症状を引き起こします。

このように、疾患によって下部尿路機能に障害が引き起こされますが、多くの疾患では、前立腺肥大症と同様に尿排出障害と蓄尿障害の両方を引き起こします。加えて、多くの患者さんでは加齢による機能低下も起こっています。加齢とともに膀胱容量は徐々に小さくなりますし、膀胱の収縮力も低下していきます。特別な病気になっていなくても、高齢者では過活動膀胱の状態となる患者さんは増加します。

疾患の有無に関わらず高齢者では、程度の差はあるものの下部尿路機能障害が起こっており、その原因は非常に多岐にわたると言えます。よって症状だけから疾患を診断し、その疾患をねらって治療をするのはとても難しい事なのです。そこで専門医以外で下部尿路症状を治療する際は、その下部尿路症状の原因が、蓄尿障害からもたらされたものなのか、尿排出障害からもたらされたものなのかを判断し、それぞれの機能障害に対する対症療法を行うこととなります。