PSAとは
前立腺がん検診ではPSAという血液検査を行います。PSAとは前立腺特異抗原といい、前立腺にだけ存在する物質で、通常は精液の中にだけ存在します。血液の中にはほんの少しだけしか入っていかないため、正常の患者さんではPSAは低い数字となり、多くの場合正常値は4以下に設定されます。前立腺がない女性では、当然PSAはゼロに近い数値となります。
PSAが上昇する原因
このPSAは前立腺に病気があると、高い数値となります。その代表的なものが前立腺がんです。ほかには前立腺肥大症や前立腺炎などがあります。PSAを測定する前に前立腺を強く押さえたりするとPSAが高くなることがあり、性活動やひどい便秘などでPSAが異常値となることがあります。
前立腺肥大症
前立腺肥大症とは、前立腺が大きくなることで排尿の具合が悪くなる病気ですが、前立腺が大きくなればなるほど、PSAは高めの数字になります。正常は4以下ですが20を超えることも時々あります。
前立腺炎
前立腺炎とは何らかの問題によって前立腺に炎症が生じた状態をいいます。炎症が必ず問題を起こすわけではなく無症状のこともよくあります。ばい菌が前立腺に入ることで、痛みや発熱が起こる状態を急性細菌性前立腺炎と呼び、非常に症状が強い場合には入院を必要とすることもあります。急性細菌性前立腺炎ではPSAは正常の時もありますが、場合によっては100を超えるほど高い数字になることもあります。
前立腺がん
前立腺がんでは多くの場合PSAが高くなります。ごくまれにPSAが異常値とならない前立腺がんがあります。このタイプの前立腺がんは非常に発見が難しく、また進行も早いため、治療が難しいといわれています。
一般的な前立腺がんでは、がんの量とPSAがある程度比例します。がんの大きさが同じでも、それぞれのがんの性質によってPSAの数値は多少異なります。しかし、ひとりの患者さんの中のがん細胞の性質が急に変わることはあまりないため、PSAの増減を調べることで、がん細胞の増減をだいたい想像することが可能です。よって、前立腺がんの治療効果を調べたり、もしくは根治したのかどうかの判断や、再発が起こっていないかどうかを調べたりするために、PSAはとても役に立ちます。
前立腺がん検診
このPSAを使って、前立腺がん検診を行っています。血液検査だけでがんが見つかる可能性がわかります。非常に簡単に行えることもあり、海外では非常に広く行われています。しかし、前述の通りほかの病気でもPSAは異常となるため、PSAが高いからといって必ずしも前立腺がんではないこともよくあります。とくに、検診では見落としをなるべく避ける必要があるため、PSAの正常と異常の境界線は非常に厳しめの数値に設定されています。以前は10を境界線としていましたが、見落としが多いことがわかったため、現在はほとんどの検診で4という数字が境界線として使われます。そのためがんでは無い患者さんも多く検診で引っかかってきます。