最近の山行記録
2001年秋〜唐松から鑓温泉〜
1.計画 夏の黒部源流から戻った足で何十年ぶりに振りに母校へ寄った。同窓生の連絡先が知りたかったからだ。キャンパスはずいぶん変わっているのに、部室は相変わらずの汚さだ。扇風機が一人で回っている。壁の黒板には夏山の各パーティーの予定表。どうやら全部終わって小屋管に入っているらしい。真中の大きい机の上には読みかけの登山雑誌、小屋管の食料計画のメモ、誰かのハーケン、灰皿、そして、楽書き帳!かつてと同じような大学ノートに同じような書きこみ。そこに、我家の連絡先を書いてOB名簿を送ってくれるように頼んだ。数日後メールで連絡があり、今度の50周年の集いの事を知る。私たちの名前はどう言う訳か名簿に無かったのだ。この春、八方尾根で亡くなったOBの追悼登山もするそうだ。ならば、もう少し足を伸ばしたいではないか。 2.準備 月曜日休みを確保する。 |
3.行動記録 01/10/13 (土) |
12:00 | 自宅出発 晴れ 昨日車検から戻ったばかりなのにエンジンがかからず青くなる。私のインプレッサにつないで諦めた頃やっと始動。サービスエリアもエンジンをかけっぱなしだった。 |
17:00 | ニポポ着。雑木林の中。内部は山小屋風の木造り。先輩たちに挨拶をして受付を済ませる。私たちの部屋は向かいのホテルだそうだ。どうやら若い方らしい。 |
18:00 | 懇親会。総勢86名。設立者の紹介の他は誰も肩書きを言わない。ただ、同じサークルに籍を置いた、かつての山仲間と言うだけの繋がり。パーティだから、それなりの服がいるかと主人は心配していたが、殆どの人はそのまま山に行けそうな格好だった。会場はこじんまりとしたホール。立食パーティーでお酒は自由にお代わりができた。白ワインを3杯頂いたあと、水割りをもらう。合宿を思い出した。合宿の差し入れはウイスキーと決まっていたから。メールをくれた現役学生は3年の女子だった。今は男女混じって活動しているとのこと。山の歌も今の学生たちは知らないようだ。様変わりしている。OBは私たちの下の世代は10人ぐらいいたのに、上の世代は8年先輩の方を知っているだけでその上は遥か雲の上の先輩たちだ。どこに、しけ込んでいるかと同学年の子に電話したら、全部固まって、とある隠れ家で酒を飲んでいた。さては、確信犯。 |
21:00 | ホテルの露天風呂に入る。檜の香りがする。秋の林の冷たい空気が気持ち良い。あがってから、さっきの会場の横のバーで黒ビールを飲む。ここのマスターに、明日のうちに唐松から、鑓温泉に行きたいというと、そんな人聞いた事が無いと言う。唐松の後のアップダウンが大きく、キレットが難所らしい。唐松は今年すでに2回冠雪しているし、鑓温泉小屋もやっているか分からないらしい。一日では無理かしら。 |
22:00 | 明日の登山の支度をして、消灯。 |
01/10/14(日) |
6:00 | 起床。快晴。窓の外のナナカマドが真っ赤に紅葉している。 |
7:00 | 朝食。隣の席の人が唐松まで登る人がいないか呼びかけている。帰りの車が欲しいらしい。たいていの人は八方の遭難場所で引き返すらしい。私たちが鑓温泉まで行くつもりだというと、鑓温泉小屋は閉まっているかもしれないから、ニポポのご主人に確かめた方が良いという。 |
8:00 | ホテル前で記念撮影。60代になっても昔の愛称で呼び合っている。私たちの世代もああなりたい。 |
8:30 | ホテルにパジェロを預け、黒菱平まで他の車に便乗させていただく。八方は毎年のように来ているが秋に来るのは初めてだ。紅葉が美しい。 |
9:00 | リフト乗り場。15人の往復団体乗車券を買っているが、私たちは帰りは使わないので個人で買う。 |
9:15 | 登り口。60代の方が多かったが、さすがみんな足元がしっかりしている。花束を持ったOB会長は見る見る先の方を歩いていく。ここは観光客も割りに多く、軽装の人も見かけた。 |
10:00 | 八方池から10分ぐらいの所が遭難場所だった。着いた人からケルンを積み会長が花束を置き同窓の人が酒を供えた。黙祷。 |
10:30 | 唐松へ出発。途中まで一緒だったニポポのご主人たち3人はすでに一足先に行かれたようだ。 |
11:20 | 丸山ケルン。小学校3年生ぐらいの男の子がチョロチョロする。父親と二人連れらしいが、父親が追いつくまで待てない。元気な子だ。昔の息子たちを思い出す。ケルンを過ぎた這松帯で雷鳥を3羽見かける。成鳥ではない。大きいが雛だ。少し換羽していて白い部分がある。写真を撮られるとそそくさと這松の茂みに隠れた。昨日のパーティの席でその昔、雷鳥を食べた人の話を聞いた。その時は特別天然記念物ではなかったらしいが・・・。 |
11:30 | 山荘への最後の登りの手前で1本。サービスエリアで買ってきた蜜柑がおいしい。今日は半そででも良いぐらいの快晴だ。遠く富士山も見える。山並みは文字通り山波のようだ。薄青くグラデーションになって幾重にも重なっている。 |
12:00 | 唐松山荘着。小屋の西側に雪が少し残っている。やはり稜線は風が冷たい。雨具を着込んで頂上から降りてくる先輩たちを待つ。10分ほどして3人は戻ってきた。少し息を切らしていても元気そうだ。ニポポのご主人のぺリさんは唐松山荘のご主人と知り合いらしく私たちのことを紹介してくださった。おかげで、親切にしていただいた。やはり、天狗小屋も鑓温泉小屋も閉鎖されているそうだ。となると、今夜はここに泊まって明日はできるだけ早く出発しよう。 |
18:00 | 夕食。小屋の食事をとるのは何年振りだろう。優雅だ。しかし、明日の行程を考えると不安だ。コースタイムで9時間。通常の2日分だ。後立山連邦、剣岳、毛勝三山の壮大な夕暮れも、満天の星空も、心から楽しめない。小屋のご主人の話では明日まで天気は持つそうだが、もし、悪かったら即、八方尾根を降りよう。ストーブが炊いてあるが寒い。セーターを着込む。手袋を忘れたのが気がかりだったが、軍手が売店にあるのを見つけ買った。これで、少し、不安が解消された。 |
19:00 | 布団のなかにシュラフに包まって寝る。途中、何度も目が覚める。暑いのか熱があるのか寝汗をかいている。ペットボトルの水を1口飲みうとうとしかけたら、下の方で音がする。どうやら、御来光を撮りに行く人たちのようだ。そろそろ起きる時間のようだ。 |
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和気藹々と記念写真を撮る。冗談が飛び交う。 | 到着した人からケルンを積み、揃うのを待つ。 |
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這松に入っていくライチョウ。 | 沈む夕陽と裏剣のシルエット。 |
01/10/16 (月) |
5:30 | 起床。寒いのでセーターの上に雨具を着る。朝食の前に顔を洗いたいが水はない。ここは後立。水は全て買わなければ無い。昨夜の泊り客の人の話では日の出は5:55とのこと。まだ間に合う。小屋の外へ出る。ここは稜線にあるので、眺望が良く、日の出も日の入りも見える。信州側の日の出が見えた。今日も晴天だ。風も無い。予定通り行けそうだ。 |
6:00 | 朝食。バイトの子達は学生だろうか。黙々と良く働く。接客態度も丁寧だ。あまり食欲は無いが、残さず食べる。主人はご飯を3杯お代わりした。今日の行動食は余裕が無い。飲料水を1L買う。 |
6:30 | とにかく、早く出発しないと、後が無い。唐松岳を目指す。思ったより寒くはないが、道は霜柱が付いている。サクサク言わせながら歩く。 |
6:45 | 唐松岳頂上。コースタイム30分の所を半分で来た。そそくさと写真を撮り、下りに向かう。 |
7:50 | 不帰第V峰頂上で雨具、セーターを脱ぐ。本番はこれから、やや緊張。アップダウンはあるがそんな危険な所は無い。大した事は無いなと減らず口を叩いていたが、第U峰の北面が凄い所だった。右も左も断崖絶壁。足を踏み外すと一たまりも無いところ。所々もろくなっていて、誰も居ないはずなのに時々落石の音がする。主人が言うには、石の間の水分が凍っていて膨張したのが、日が昇って温かくなって溶けるからだそうだ。鎖場、梯子が何ヶ所もある。雨が降っていたり凍っていたら絶対滑ると思う。緊張すると体が硬くなるのが分かる。1時間あまりでようやく不帰 を脱出。 |
9:20 |
天狗の大下りを反対から登りきった所。ザラ峠に似た延々ジグザグになっている。 |
10:20 | 天狗の頭。今来た道を振り返る。西側と東側では全然山肌の様子が違う。しばらく行くと二人のパーティーに出会う。白馬山荘から来たそうだ。唐松までいくらしい。今登って来た道を下るのもしんどそう。 |
11:00 | 天狗小屋。昼食。パンとりんご。小屋は閉鎖されている。小屋の前の雪渓はいまだ残っているが、水場は汚くて使えない。 |
11:30 | 天狗小屋出発。しばらく行くと鑓温泉の下りになる。地図を見ると800メートル等高線の差がある。いやな予感。 |
12:30 | 膝とつま先が限界になり、樹林帯に入る手前で一本。単独行の登山者に出会う。天狗小屋にテントを張るらしい。水場は使えないというと、水も用意して来たそうだ。あの装備でこの坂を登るのはきついだろうな。天気は下り坂。樹林帯になってから所々沢になったり崖になっている。石が丸くなっていて滑りやすい。鎖場も何ヶ所か有って気が抜けない。 |
13:20 | 鑓温泉着。変なアベックがイチャイチャしている。めげずに露天風呂に入る。お湯は熱めだが入れない事は無い。硫黄の匂いが凄いが、極楽気分である。足の豆がふやけて、また靴をはくのが苦痛だ。 |
14:15 | 鑓温泉出発。温泉に入った後、ペースががくんと落ちた。気がせくが早く歩けない。さっきのアベックは遥か先を行っている。女の子がすっ飛ばして行く。私たちに見られたのが恥ずかしいのかもしれない。 |
15:20 | ガラ沢。ここでも単独後者に出会う。もう、時間が時間だから、今日は鑓温泉のテント場だろう。それも良いかもしれない。温泉に漬かりながら日の出を拝めるそうだ。ただし、雨にならなければ。 |
16:30 | 足が棒のようになっている。休憩するのも疲れる。なかなか沢の出会いに着かない。 |
17:15 | 登り口に出たところで携帯でタクシーを呼ぶ。ここまでは来てくれないそうだ。猿倉まで歩くしかない。主人は私を置いてすたすたと先に行く。離婚しようかと思った。猿倉山荘に到着した時は辺りは暗かった。タクシーの運転手さんの話ではこの道は工事のため朝8時から夕方5時まで通行止めだそうだ。早く降りても車が通れなかったのだ。和田野に戻り、ニポポのご主人に挨拶。鑓温泉に入れたというと喜んでくれた。さて、家路を急ごうと車のスイッチを入れようとするとエンジンが動かない!またしてもだ。仕方なく、ホテルの人に頼んで車を貸してもらい、充電しやっと動いた。もう、売り払いたい。でも、車検を受けたばかりだから、後2年は乗らなくてはならない。 |
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唐松山荘を後にする。急な斜面に建てられている。 | 鎖場がいくつもある。鎖に頼り過ぎないように慎重に足を運ぶ。 | 唐松、不帰を振り返る。凄い痩せ尾根だ。第U峰北面、名に恥じない急峻な岩壁。雨の時は危険。
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天狗小屋で昼食。水場は濁っていて使えない。 |
鑓温泉の露天風呂から上がったところ。 |
猿倉の小屋でタクシーを待つ。辺りは真っ暗だ。 |