犬の肥満細胞腫

 犬の肥満細胞腫は腫瘍性疾患の中では多いタイプです。皮膚にできることが多く、内臓(脾臓、腸管)にできたり、生殖器にできたりもします。この例のように乳房にできることは多くはありませんが、悪性度は高いようです。右は手術前に腹部の剃毛消毒をしたところの写真ですが、出血が止まりません。肥満細胞が血液凝固阻止因子のヘパリンを放出しているからです。尾側側の乳房の腫張はリンパ節の腫張でした。
 ちなみに肥満細胞と、体の肥満は全く関係がありません。
 肥満細胞は細胞室内に好塩基性の顆粒を大量に含んでおり特異的です。細胞診での診断が比較的容易であり重要です。細胞の成熟性が病態の悪性度に関連が強く、未分化のタイプほど生存期間は短いと考えられています。
 この例はGRADE II でしたが、近位のリンパ節に転移が認められており、予後は極めて悪いと思われました。

犬の肥満細胞の分類

下3枚の写真は皮膚の組織写真であるが、激しい浮腫と出血が認めらました。肥満細胞顆粒はHE染色に染まりません。
 治療の基本は、外科的摘出ですが、化学療法を併せて行う場合も多いです。悪性度の低いタイプは、外科的摘出だけで再発がない場合が多いのですが悪性度の高いタイプは転移したり再発したりします。化学療法は生存期間の延長を期待させています。
 今回、化学療法は飼い主は希望されず、約3ヶ月後に再発し亡くなられました。実は、この犬は大変凶暴で飼い主さんも噛みつかれて手に負えなかったのでした。