犬の肉芽腫性脂腺炎

[はじめに] 犬の肉芽腫性脂腺炎(Granulomatous sebaceous adenitis)は主に秋田犬、スタンダード・プードルに発症する、粘着性の鱗屑の増加・脱毛・マット状に固着した被毛を特徴的症状とした、炎症性の不可逆性の皮膚疾患です。本疾患の原因として、遺伝あるいは自己免疫の関与が考えられていますが、未だ明らかにはされていません。今回、全身性に重度の脂漏を呈した犬が来院し、肉芽腫性脂腺炎と診断し治療を行ったので、その概要を報告します。
[症例] 症例は、秋田犬、雌(避妊済み)、2才、体重 22.95kg です。他院にて8ヶ月にわたって食事療法、脂肪酸、甲状腺ホルモン剤などの治療を受けたが、症状の改善がみられず当院に来院しました。初診時には、多量の灰色の脂っぽい鱗屑および脱毛が認められました。病変は背部、臀部を中心にほぼ全身性でした。
 週2回の二硫化セレン(1%)によるシャンプーと、プレドニゾロン(15mg/日)の投与で治療を開始し、脂肪酸の添加を指示しました。その後、蛋白同化ホルモン剤、硫酸亜鉛、ビタミンE製剤などをプレドニゾロンと併用しました。また、皮膚の二次感染がみられたときには、抗生物質の投与あるいは軟膏の塗布を行った。これらの治療によって、鱗屑および脱毛は、初診時より改善されたものの、顕著な改善は認められませんでした。
 初診から 5.5ヶ月後、血液検査および皮膚生検を行いました。臨床症状および検査結果から、皮脂腺炎と診断し、ビタミンA誘導体である合成レチノイド(エトレチネート:20mg/日)の投与を開始しました。投与開始10日において、鱗屑は白色化かつ乾燥し、減少してきた。その後、尾部および鼻稜部を除き全身で顕著な発毛が認められ、鱗屑はさらに減少しました。経過良好のため、投与38日後には、エトレチネートを10mg/日と減量しました。減量後は、症状の大きな改善も悪化もみられなかったため、113日後に投与を中止しました。休薬後約2週間で、抜け毛が増えたため投薬を再開した。二次性被毛の抜毛抑制はあまり認められなかったが、鱗屑は減少しました。
 皮脂および脱毛を完全にコントロールすることは困難であり、抗脂漏シャンプー中心の治療を行い、二次感染に対しては随時抗生剤を投与しました。飼い主の都合により、転院されそのご経過不明でした。
[考察] 肉芽腫性脂腺炎の治療に対して、エトレチネートは脂漏の抑制に中等度の有効性が認められました。エトレチネートの投与量、投与期間については、今後の研究課題です。
顔面と肢端以外の皮膚に脂漏が著しく、二次性被毛の脱毛が見られた。
抜けた被毛の毛根部に、灰色でベトッとした脂漏が付いている。
背部皮膚の組織写真。皮脂腺が消失している。毛包内角化が亢進している。