Steppin' Into Your World

それは、ある晴れた日の午後。
太陽が西に傾き始めた頃、ここから亀慈まで遠すぎると判断した一行は
山道の比較的穏やかな場所で野宿をすることに決めた。

夕飯の支度は当然八戒の役目だった。
河への水汲みは涼鈴と桔花。
かまどの用意は悟浄。
夕飯の足りない材料を集めに行くのは玄娘と悟空の役目だった。


「お前も水汲みの方が良かったんじゃないか?」
今までの道中の中でたけのこを見つけた涼鈴がと言ったため、
それを取りに向かう途中、悟空は玄娘に話しかけた。
「別に? 私はこっちで良かったと思っているけど」
見落とさないよう視線を落としながら歩く三蔵は軽く答えた。
「それに・・・」
「それに?」
途中まで言いかけた玄娘の言葉の先を探る悟空。
遠くで隼のなく声が響いた。
「・・・・・・水汲みは重いし」
「・・・そっか」
少しだけ、ほんの少しだけ悟空は淡い期待を持っていたのだが、
それは一瞬にして砕かれた。

実のところ、人間に干渉したがらない悟空だが、
心の微妙な変化か何かだろう。玄娘の事を気にかけ始めていた。
どんなに辛いことも笑顔で乗り越えていく玄娘。
弱そうに見えるその体には意外なほどの強い意思を秘めている。
最初は足手まといにしか思えなかった悟空だが、
戦闘にも慣れ始め、戦いに貢献する彼女に大きな信頼と、
本人も気付いてはいないだろう小さな恋心がうまれていた。


「あ、あれだ」
人一倍視力の良い悟空が少し遠くの道脇にある竹やぶを指差す。
少しだけ歩く速度を速めて二人はその場所へと向かった。

確かにその場所にはたけのこが生えていた。
まだ頭を出しはじめた小さなたけのこ。
「ねぇねぇ、これが良くない?」
手折るにたやすい少し成長したたけのこを見て悟空を呼びかける玄娘。
「あー、それはダメだ」
しかし駄目出し。
「なんで?」
「たけのこってのはな、まだ地面に埋まっている方が美味いんだ」
「へぇ、悟空って詳しいのね」
ちょっとだけ上機嫌だった。
それから二人の共同作業でたけのこの周りを堀り始めた。
指先が黒くなるがそんなのは構わない。
なんだか判らないが、掘っているのも楽しかった。
ある程度掘り進めてから悟空はその怪力でたけのこをへし折った。
日の光を浴びていないたけのこは少し白みを帯びていた。


「これで晩御飯は完璧ね」
「おう」
ついでに皿代わりになりそうな葉っぱも手に入れて
二人は今来た道を戻り始めた。
夕日がだんだん橙に染まっていく。夕刻はすぐそこ。
「ねぇ、悟空の好きなものってある?」
「・・・?」
「食べ物とか、うーん、食べ物以外でも何でもいいけど」
「食べものなぁ・・・」
道中での話の中で、玄娘は悟空に質問をした。
「まぁ、食いもンに文句をつけたことがねーけど、
とりあえず旨いもンなら大抵のものは好きだぜ」
いろいろ考えてみたが、答えはそれだけだった。天界で食した食べ物に 
付いて話しても多分玄娘には判るまい。
「なるほどね」
「なんで今更そんなこと聞くんだ?」

「だって・・・もう度をはじめてから何ヶ月も経つのに、私、悟空の事、
何にも知らないんだもん。みんなの前で聞けないし」
「そっか」
「うん」
玄娘はちょうど良い間隔に置かれた石を蹴り上げた。
夕日に向かって宙を飛ぶ石は、遠く離れた場所に音を立てて落ちた。
「あと・・・」
「?」
「お前のことも結構好きだ」
「私も」
悟空は玄娘の顔を見た。
夕日を見つめるその瞳はまっすぐで、凛としていた。
「それから八戒も、悟浄も、涼鈴も、桔花も。皆好きよ」


自分的には結構な告白だったのだが、軽く交わされてしまった事に
悟空は肩を落とした。
数歩前を歩く玄娘の足は軽やかだった。
とても長旅の疲れは見えない。
坂を上れば野宿の場所、にたどり着いたとき、玄娘はくるりと向きを変えた。
そしてまだ坂の下にいる悟空のところに駆け寄ると、
少しだけ頬を染めながらこう、伝えた。
「だけど、悟空が一番好きよ」


いつしか太陽は沈んでいた。

キリ番777をGETされた真神北斗様からのリクエスト
悟空と玄娘のラブストーリー ・・・でした。
ラブストーリーになっているのでしょうか??(汗) 心配です。

えーと、毎度の事ながらいいわけです。
悟空、玄娘、どこまでたけのこをとりに行ってたんですか?
帰ってくるのが遅すぎます。
あと、実はこれ、全部書き直したのでタイトルと中身が一致してません。
だめじゃん。(to自分)
ラブストーリーだったので、自分が悟空×玄奘に取っておいた話を
ここで使うかと思ったのですが・・・・・・ムリでした。それだけです。


しかしながら今回ほど頭をひねった小説もありませんでした。
だって・・・ラブストーリーなんて・・・書いたことないし・・・。
リクエストされた真神様の描く話の方が・・・ラブなんですもの。
何度書いても書いても気に入らなくて・・・どれくらいボツったのでしょう。


真神様、これでよろしいでしょうか??