大唐西域異伝
〓第二章・二回〓

いつも聞いていた音が聞こえる。
いつも聞いていた言葉が聞こえる。

雑踏の中、ゆっくりと目を開けた。
どんな状況で時間を越えてきたかは判らない。だけど、ここは私が知っている『今』。
さっきよりは少しだけ色の薄い空が頭上に広がっている。周りの状況をうかがいながら私は辺りを見回した。
なんか・・・皆、どうして私たちの方を変な目で見るのかしら・・・? なんで、一歩引いて歩いていくの?
少しだけ変な気持ちになりながら、私は後ろについてきたはずの悟空たちに振り返った。


・・・!!
「わぁ!!」
ついつい大きな声を上げてしまう。
やだやだ、き、着物のまんまじゃない!! 目立つに決まってるよぅ!
顔がだんだん熱くなっていくのが判る。恥ずかしさで顔が赤くなっているのだ。
「悟空、涼鈴、紅孩児さん、走って!!」
どっちに向かって走って良いかは判らなかった。だけど、その場所にずっといる事なんて出来なくて。
屋台の並ぶ町の中を走り抜け、最初の角を右に曲がる。人通りの少ない方向を選んでまた角を曲がる。
多分、こっちは町の・・・西側。

「なんだよ、急に走り出して」
悟空が不満そうに言う。そういえば走る理由をいってなかったっけ。
「だって、皆が変な目で見てたんだもの。今の格好じゃないでしょ?」
そう言って近くの民家に干してある洗濯物を指差す。そこにはシャツやらゴムズボンなどが干されてあった。
「気にしなきゃいいじゃない、そんなの」
涼鈴があっけらかんとして笑う。紅孩児も気にしてなさそう。もしかして、人目を気にしていたのって私だけ?
「だって・・・」
「だって、また山の方に向かうのよ、そうしたら人目を気にしなくてもいいじゃない」
うーん、それは・・・そうなんだけど。
「しょうがねェなー」
そういうと悟空は何かをぶつぶつ言いながら耳の後ろを掻きだした。
「あ」
そこに現れたのは私が着ていた服。道具袋に入っていなかったから、もうどこかにやってしまったんだと思っていた私の服。
不思議そうに受け取る私に悟空は、術で小さくして持っていたということを教えてくれた。
もし道具袋を落としてしまったり、なくしてしまったりした場合、時代を交差したものが過去に置き去りになってしまうと大変だからって。
三蔵さんにそう言われたみたい。
「着替えるならとっとと着替えて来い」
悟空はそういってそっぽを向いた。


久々に腕を通した上着。久々に履いた靴。ちょっと悟空の匂いが付いているけどあの日のままの服になんか少しだけ嬉しくなった。
「可愛いね、それ」
涼鈴が誉めてくれる。
「変わってんな」
そういってじろじろと見てくる紅孩児。ちょっと恥ずかしい。
悟空は・・・何も言わなかった。まぁ、この格好で最初に会ったわけだし。
ちょっとだけ何かを期待したけど何も無くて気が抜けた。
「とりあえず、先に進みましょ」
皆を促して立ち止まっていた足を動かす。一瞬見えたあの場所へ早く行かなくっちゃ!


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††小さな言い訳。††
と、とりあえずなんとか更新。だめだ〜、日にちを置くと何処まで書いたか判らなくなる〜。
ちょくちょく書かなきゃ、と思いつつ、冬コミの準備でまた更新が滞るかも…(汗)。
受かって凄くありがたいんですけどね。