大唐西域異伝
〓第二章・五回〓

 「さてと」
 そう言って悟空は立ち上がった。
 そして背負っていた如意棒をまっすぐに持ち、大鳥の巣に向かって構えた。
「俺様を叩き落しやがって」
 少しだけ怖い悟空の言葉。
 しかし、そこには私たちを狙う鳥はいなくて・・・。ただ、そこにはわが子を思う親鳥の姿があるだけだった。

「悟空、ダメよ」
「?」
「あの子達を守りたかっただけなのよ。だから・・・」
「・・・・・・」
 悟空は私の目を見る。
 

 バサバサと音を立て鳥たちは飛び去った。
 私たちがこれ以上巣に危害を加えないと判断したんだろう。
 頭の良い鳥なんだな、と感心しつつ、私はその姿を見送った。
「ねぇねぇ、三蔵!」
 涼鈴が巣のあった真下から私たちを呼ぶ。悟空と私、そして紅孩児がその声に呼ばれ涼鈴の元に集まる。
 何かを見つけたのだろう。涼鈴は嬉しそうにそれを掲げながら私たちに見せた。
 それは小さな丸い珠。
 赤い宝石には『封』の文字が描かれ、その色はこの世の『赤』を凝縮したくらい鮮やかな色を放っていた。
「!」
 それを見て、息を飲んだのは紅孩児だった。

「綺麗な珠でしょ? きっとあの子達が『迷惑かけてごめんね』って私たちにくれたんだよ!」
 涼鈴のすごく前向きな解釈。だけど・・・これって・・・。

「それを俺によこせ!!」
 目の前に手が飛び出した。そして涼鈴の手元から奪われる紅玉。
 紅孩児だった。そして紅孩児はその珠を目の前に置き、中をじっと見る。
「紅孩児・・・?」
「間違いねぇ、お袋の心のかけらだ!!」

 そういえば、紅孩児の両親は心のかけらを盗まれて・・・それで紅孩児はその心のかけらをさがしていたんだっけ。
 そしてこれがそうなのだろう。
 少しだけその紅玉を手に乗せてもらったのだが、その暖かさに驚いた。
 何の変哲もない珠だが、それは人肌のように温かい。涼鈴は雛鳥と一緒にいたから暖かくなっていたんだろうといっていたけれど、
まだじんわりと暖かいそれに涼鈴の説は否定された。
 でも、なんでこんなところにあるのかしら?

「それを返してもらおうか」

 背後から重い声が聞こえた。
 ゆっくりと振り返る。そこには見たこともない化け物がいた。


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††小さな言い訳。††
ごめんなさい。自分で何書いて良いのか最近わからなくなりました。
ちょっと整理しますね。
もしかしたら今まで書いたものを手直しするかも知れません