大きなカバン
先日、新聞で見かけた写真の人物と名前に見覚えがあった。
病院の泌尿器科部長として活躍している女医さんを紹介している記事だった。
それを読んで、三十数年前の記憶がよみがえった。
その頃、私は大学の教養課程に通っていた。
それなりに勉強して志望の大学に入ったものの、将来特にやりたいと思うこともなく、なんとなく中途半端な気持ちで過ごしていた。
受けていたいくつかの授業で、その女性と同じクラスだった。
彼女は医学部の学生で私とは学部が違ったのだが、わざわざそのクラスを選択して来ているようだった。
彼女は、まじめな勉強家だった。
まるでまだ受験勉強を続けているような感じで、周りの学生とは違う雰囲気を持っていた。
四角い大きなアタッシュケースを提げていて、中には勉強道具がいっぱいだった。
私は内心、もう勉強に必死になる必要もないのにと思っていた。
でも彼女は、将来良い医師になるために努力していたのだった。
そしてその後も努力を続けて、今の地位になったのだろう。
新聞の記事には、女性患者の立場に立った治療をしてくれる女医さんだと書いてあった。
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