せんかしの雑文

漫画の思い出(前期)

私が子供の頃には、貸本屋という商売があった。
近所の裏筒井町に1軒あって、漫画の月刊誌や単行本を貸していた。
年上の子に付いて行って、借りた物を読ませてもらった覚えがある。

そこで扱っているような漫画本が、家にも数冊あった。
作者や題名は忘れてしまったが、1冊だけ少し内容を覚えている。
原始時代の家族を描いたものだった。
マンモスを狩れずに魚ばかり獲って来る父親に「トト(父)さんはトト(魚)ばかり獲って来る」と愚痴をこぼしたり、ガールフレンドの目や口を果物に例えて褒めた後「でも絵にすると面白い」と言って怒らせる場面などがあった。
私はこの漫画が好きで、折に触れて何度も読み返した。

小学2年頃、近所の書店の店頭に横山光輝の『伊賀の影丸』の単行本が置いてあった。
コミック版より大きい、雑誌と同じ大きさのものだった。
買い物の帰りに、母親がその2冊を買ってくれた。
忍者の戦いが興味深く描かれ、話の内容はとても面白かった。
続きを読みたいと思ったが、その機会は得られなかった。
この2冊も、何度も何度も読み返した。

小学生の間は、自分から漫画を買うことは無かった。
時々父親が『冒険王』とか『少年画報』といった月刊誌を買ってくれた。
続き物も載っていたが、買い続ける気にはならなかった。
この頃はまだ友達と外で遊ぶ方が楽しかったし、小遣いはプラモデルを買うのに使っていた。

小学4年頃に買ってもらった雑誌に、妖怪図鑑という付録があった。
ろくろ首とか垢なめとかの妖怪を、絵入りで解説した冊子だった。
私は、そのおどろおどろしい絵がとても怖かった。
これを持っていると妖怪が寄って来て、何か悪いことが起こるような気がした。
ひどく憂鬱な気分になって、それを箪笥の奥に隠していた。

今から思うと、さっさと捨てれば良かったのにと思う。
それでも、私には、この頃の自分を笑う資格は無い。
他人から見ると風変わりな思考や行動は、今でも私の中に残っている。