昔なりたかったもの
子供の頃、伝統工芸の紹介番組をテレビで見るのが好きだった。
職人の手によって物が作られる様子は、まるで魔法の様だった。
私は、同じ作業を繰り返すのは苦にならないので、
そういう仕事が自分に向いているのかもしれないと思った。
でも、私には芸術的な素養が全く無いので、無理だと分かった。
父親は私に、壊れて使えなくなった掛け時計やラジオなどを分解させてくれた。
私には、人間の気持ちよりも機械の気持ちの方が分かり易かった。
自動車レースが好きだったので、ピットで作業するメカニックになれたらいいなと思った。
でも、人と接するのが苦手な私には、チームプレーは出来ない。
現実的なレベルでは、工作機械のオペレーターになれば良かったかもしれない。
小さな部品を手作業で作るような仕事が良かった。
人と関わらず黙々と作業するのが、自分には似合っている。
実際の私がたどって来た時間は、自分の特異性を浮かび上がらせ、
今の生き方を決定させた。
他人と同じ様に生きようとして傷を深くするより、結局はこれで良かったのだと思う。
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