せんかしの雑文

妾宅

子供の頃に住んでいた家から小学校までは、歩いて5分もかからなかった。
それでも、決まり通り、朝は集団登校していた。
私たちの集合場所は、女子が元信用金庫の前、男子がその隣の黒門の前だった。

商店街の中では場違いなこの黒門の家は、お妾さんの家だった。
妾や愛人の意味は、子供ながらに何となく理解していた。

この家には、子供が2人居た。
私と同学年の女の子と、2つ年下の男の子だった。

この男の子が、祭りの囃子の練習に来るようになった。
初めての時、お妾さんが高級なお菓子を差し入れしてくれた。
色白でぽっちゃりした顔形が、男の子とそっくりだった。
じゃあ、女の子の方は、父親似なんだろうなと思った。

そこで男の子と知り合いになり、何度か家に遊びに行った。
庭に大きな池があったりして、私の目には大層立派に見えた。

時々、黒塗りの車が止まっていて、運転手が羽箒で埃を払っていた。
朝、泊まった主人を社用車で迎えに来ていたのだろう。
ということは、会社にもお妾さんの存在は知られていたわけだ。

大っぴらに愛人を囲うのを、世間が認めていたことになる。
それだけ、男性の立場が強かったということだろうか。