ヴァリエーションルート

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 ―――たぶん、驚きすぎたのだろう。数秒間は、騎士レオナールの顔をポカンと見つめていたに違いない。でもそれは、意外と短い時間だったのかもしれないが。
 僕(デニム)はその時、騎士レオナールへの答えを考えるというより”言葉”を聞いていた。”言葉”は、自分の心の中から沸き上がってきていたのか・・・胸につけている青光の首飾りから聞こえてきたのか・・

”・・・コノママデ イイノカ? タシカニ メヲツブレバ ラクダカラネ”
”ソノママニシテオキナサイ ナルヨウニナルノダカラ ”
”オモイドオリニナル セカイガ ホシイワケデハ ナイノダロウ?”

 思い通りに行かないのが世の中だなんて割り切りたくない!
 だが僕は、僕の思い通りに行くかどうか、ではなくて・・・


 とっさに僕は、こう答えていた。
デニム
「・・・わかりました。理想のために、・・・この手を汚しましょう。

 騎士レオナールは、ほっと息をついた。それこそ独りで悩んでいたんだろう・・。
騎士レオナール
「・・・すまない。彼らの犠牲を無駄にはしない。

ヴァイス
「本気かッ?本気で言っているのかッ!
 ヴァイスの表情を見た僕は、少し意地悪な気持ちになった。それで僕は、彼を突き放すように強く言った。

デニム
「きれい事ばかりで勝つことはできない。現実を見ればわかることだ。
 さあ、どう答えてくれる?ヴァイス。

ヴァイス
「どうしたんだッ!それじゃ、やつらと変わんないじゃないかッ!
 いいぞ、ヴァイス、ご名答!!と、心の中で僕は拍手する。顔をこわばらせたまま、騎士レオナールはヴァイスに向き直る、ゆっくりと・・・。

騎士レオナール
「ヴァイスくん、きみは反対するんだね。我々に従えないと言うんだね。

ヴァイス
「当たり前だろ!罪もない人々を殺して真の革命なんかおこせるもんかッ!
 いいぞ、ご両人!!
 ・・・・僕は心を決めたのだ。
 光の神イシュタルは、戦争の神でもあるのだ。

騎士レオナール
「スケープゴートが必要なのだ・・・。愚かな人の心をつかむためのなッ!
 愚か、か・・・(^^;)。 愚かじゃない人間がいると、貴方は思っているのですか?
 ・・騎士レオナールは、ヴァイスを説得できるとでも思ったのか、それとも黙らせようとでも思っているのか、今やヴァイスしか見ていない。

ヴァイス
「カチュア!おまえはいいのか!?こんなやつらに従うのかッ!

カチュア
「私は・・・、私は・・・、私はいつだって弟と・・・!
 姉さんの表情が凍り付いた。
 泣きそうに僕を見ている姉さんの表情が、そしてやはり驚いたようなヴァイスの表情が、あまりに可笑しくて僕はゲラゲラ笑いだそうかと思った。だって、時が止まっていくかのようにゆっくりと傾いでいく、騎士レオナールの後ろ姿も愚かしいし、その戯画の背景のように、二人が立っているのがなんだか信じられない光景だったからだ。

ヴァイス
「!・・・デニム、お前はいったいッ!?
カチュア
「 こ、殺・・・し、死んじゃったの?
デニム
「グズグズしているヒマはないよッ、二人とも。 早く彼を・・・。!


 ぐったりと目を閉じている騎士レオナールを手近の納屋に隠すのが精一杯だった・・・(たぶんガルガスタン兵らしい)見回りが、僕らの騒ぎに気づき、せまってきたのだ。とにかく僕らは、逃げた・・・。逃げるために、また血を幾筋も大地に流して・・。
 ――あの時、僕は騎士レオナールが死んでも仕方がないと判断して、あろうことか卑怯にも棒キレで彼の頭を背後から強打したのだった。斬ってしまったら、確実に殺してしまいそうだったし、剣をつかったら、かなりの確率で僕の仕業だということがバレてしまうと思ったからだ。
 即答で、騎士レオナールに”従う”と意思表示したのは、実は本意じゃなかった。あの時の騎士レオナールの目がすごく充血してたから、いきなり拒絶して正面から争うのを避けたのだ。計画を知っているのは、たぶんロンウェー公爵と騎士レオナールだけらしいと僕は推理した。だからいったん油断させて、騎士レオナールを捕縛して虐殺回避という逆転ホームランを狙ったというわけだ。
 勿論、捕縛することに失敗したら、相討ち覚悟で殺そうと思った。僕と騎士レオナール二人が死んだ後は、虐殺なしでアルモリカへ帰還してくれるだろうと思ったし。
 残念ながら、ガルガスタン兵の包囲を突破するのが精一杯で騎士レオナールの捕縛まで出来ずじまいだった・・・。そして、それが今後どのような結果をもたらすことになるか、その時点の僕らは全く分かっていなかった。

 逃げのびてひと息を入れたところで僕は、ヴァイスとカチュアにそんな説明をした。二人とも、まるで僕が僕じゃないかのように、まじまじと僕を見つめていた。

 そうだ、僕は今までの僕じゃない。僕は胸に輝く首飾りを見つめた。イシュタル神の静かなる怒りというものが、どんなものかは知らない。だが僕は、今までの僕と決別すべきだと思ったのだ・・・騎士レオナールや異国の聖騎士に憧れて、彼らの言うとおりに行動すれば良いのだと安易に考えていた、今までの自分と。

.....to be continue.....



 というわけで、『バルマムッサの虐殺』時点から分岐。デニムとヴァイスが共に”虐殺回避”をするというルートヴァリエーションを考えて、ちょっとだけ書いてみました。
 「なあんだ、全然面白みがないじゃん。ふたりでCルートを目指すってワケ?」と思われる方がいらっしゃるでしょうが、抑圧されることに耐えて進軍するうちに、友と方針がズレていく、あるいは離反されるという葛藤も秘めていたりするのではないかと思います・・・。
 本能的に虐殺を嫌ったヴァイスと、”イシュタルは光の神であって闇を司ってはいない、が、正義を司る神は戦争の神でもあるのだ”と確信した主人公とでは、世界観や正義の認識がズレているという伏線をおいてます。戦争の神という認識を新たにすればLルートに行きやすいところを、あえて虐殺回避にしたのは、デニム(L)とヴァイス(L)とを共にC(=虐殺回避)ルートに置いてみたかったからです。
というわけで、こんなのを無責任に書き始めてしまいました。よかったらどうぞ。そっちが軌道に乗ってしまったら、このオマケファイルは消す予定です。