It rains cats and dogs.
 〜 どしゃぶりの雨は 地面を叩く 〜


 もしも C・N・L以外のヴァリエーションルートを妄想したら・・?
 Lルートの性格のデニムとヴァイスで。主人公にヴァイスを据えてみたら・・?
 という動機で、無責任に”Vルート”の話を、スタートさせました。
  
 まぁ、たぶん・・・「これって別のゲームじゃん??」ってことになってしまうことでしょう。
 なるべく忠実に行きたいところなんですが、妄想で暴走しないと、ただ3つのルートを敷衍しているだけになってしまいますし。ふだんトークも後回しにしてしまっているような脇役にもスポットライトを当てたいと思っていますので、あえて齟齬を生じさせるかと思います。

 「新作が出ない欲求不満(フラストレーション)が高まると、こういう馬鹿も出てくるのだなぁ。」
と、余裕を持って見ていただける方のみ、ドウゾ(笑)。


[第一章] Every dog has his day. 〜野良犬にも ツキは 来る〜

      <1:アルモリカ城>

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どうせ吐くなら、酒で吐け<1:アルモリカ城攻略後>**********************

 揺すぶってくれているのは、波のように思っていた。潮風じゃない。魚臭くもない。だけど、何となく故郷にいるような気がしていた・・何となく。
 「おら、いいかげんに起きろッ。・・・ヴァイス、よ〜しッ!」
という声がしたと思ったら、オレの頬にぞりぞり・・・っとタワシのような感触が。タワシだった方が数倍マシだった。あわてて目を開けたら、大・大アップで、ひげじょりじょりの顔があった。
 オレは、はね起きた。おかげで、くらっときた。頭がガンガンする。いや、そんなこたぁどうでもいい、ベッドだ、ベッドの上に・・なにゆえひげもじゃの男がオレのそばにいるんだ?
 すっかりトサカに来て
 「オレのベッドに・・・!」
と言いかけたが、相手・・え〜と、たしかギルダスという騎士だった。その相手が指をチッチッと振っているので、黙った。というか、今の自分の声でダメ−ジを10pはくらった(^^;。・・・そういや、覚えていた部屋のとは、窓とドアの位置が違うのが分かった。確か、逆だった。どうやら、ギルダスのベッドにオレの方が寝ていたらしい。そうか、
 「どうせ吐くなら、酒で吐け〜!!」
などとやたら、ギルダスに構われて、酔っぱらって・・・あげく寝ちまったのか。いつもだったら、野良犬みたいに酒屋の前の道に放り出されているところだ。それから、ぼろ切れか何かのように扱われる。
 だが、何もかもが・・・昨日からちょっとづつ違ってきた。そうだ、この異国の騎士たちとオレとデニム、カチュアでアルモリカ城を取り戻したんだ! 

   どうだ、状況が飲み込めたか?とでも言うように目配せしているギルダスに
 「オレ、・・・。あの・・・」
と、もごもご言いかけたら、涼しい目をした若い方の騎士、ミルディンがノックと同時に入ってきた。
 「お〜やおや。朝から隣では何を騒いでいるのかと思ったら・・・ふふっ、お邪魔でしたか?」
とミルディンは笑みを浮かべて言った。
 「いんや、ベッドはこいつに明け渡し、俺は仕方なくオネエチャンとこから朝帰りだ。疲れた、俺は・・今から寝る。ほら、どけよ。う〜、酒臭え(笑)。」

・・・腕が重い。手首も痛い・・・・・ちっ、腹もだ。オレはふらふらとベッドから降りた。
 「ふつか酔いか。まぁ、祝い酒だったしな。今日くらいは仕方ないってとこか。」
とギルダスが言ったが、ミルディンは・・・そんなはずはない、油断はまだまだ出来ないです、きっと朝食の後には会議が待っていますよ、みたいなマジメなことを言っていた。オレは、片隅の卓の上に載せておいてくれた、オレの装備品をとり上げようとした。

 ・・剣!  背中がぞわっとした、あの感触が甦ってきちまった。
 今は・・剣はきれいに拭ってある。だが、剣の柄にまで・・・どろりとした血を受けたのだった・・・。自分が思っていたより、オレは人間の斬り方がヘタだった。血も剣を侵していったが、相手の体がズシリと剣に載っているみたいで重かった・・・すごく重かった。わぁわぁ・・という喧噪のまっただ中にいながら、何だか時間だけがゆっくりスローモーションのように流れていた。自分はといえば、あやつり人形になってしまったような、奇妙な感覚だった。一緒に自分まで倒れてしまいそうだった。悲鳴などは上げたくないが、オレは口をあけて何かわめいていた、と思う。

 異国ゼノビアの騎士達は、剣さばきがあまりに見事だった。それよりも驚いたのは、彼らの呼吸だった。あんな場にいて呼吸が自然にできるのは、本当に強い戦士だけだ、とオレは思った。
 ”戦争を生き抜いていける本物の戦士とはこういうものか・・。今までのオレは、いったい何だよ、ただのガキのいきがりじゃないか・・・!”
 ”ウォルスタを守りたい、そういう決意は炎のように燃えている! だけど、ゼノビア人くらい強いガルガスタン人と戦う時がきたら、オレはやはり犬死にするだけ、なのか・・・?”
まるで、おぼれかけた犬のような浅い呼吸をしつつ、みじめさを噛み締めていた。ようやくデニムの方を振り返る余裕が出来たのは、それからだった。カチュアのためにも、デニムを庇わねばと思っていたのに、すっかり度を失っていたのだ。だが・・・・。デニムの方はといえば、オレより冷静だったような気がする。少なくとも、オレみたいにぶざまな吠え声などは発していなかった。
 ほっとした反面、いつもそうなんだよな、とオレは感じていた。オレが躍起になってようやくつかめそうなものをデニムは、軽々と獲得していく。そして素直な笑顔を見せて、神に感謝を忘れていないと言うのだった。オレはと言えば、「すげぇな、デニム!」と感心する気持ちがないわけではないのだが、デニムの方ばかり見ている神様とやらに、心の中で毒づいてばかりいた。

 オレは、のろのろと鎧を取り上げた。簡素でお粗末な鎧だったが、今日のオレには重かった。だが、オレは装備し始めた。自分のダメさ加減を認めたとかなんとか、泣き言を言おうにも、もう、オレ達は後戻りができないんだ、そんな気がしていた。戦士に向いているかどうかなんて、言っている場合じゃないんだ。オレはアルモリカ城に向かう前の、カチュアの悲しそうな瞳を、呟いた声を思いだした。
 「私はもう誰にも死んで欲しくないだけよ・・・。」

 だけど、殺さなきゃ、ガルガスタンに殺される順番を待つだけなんだ。黙ったまま犬死にしたくないと立ち上がったのは、オレ達の意志だったんだ。少なくとも、オレはそうだ。死んでいったヤツラみたいに、泥の中にくずおれて息を引き取るまでは、オレはあがくつもりだ。・・・昨日の勝利以上に、晴れやかな平和の日が訪れるのを見るために。そんな日は来るのだろうか。長く続いたうっとうしい雨が上がって快晴になるような、そんな日は・・・。ウォルスタにとっては最悪の状況が続いていて、晴れ間など想像すらできないけれど。

 どしゃぶりの雨は 地面を叩く
 いっさいがっさい なにもかも
 善悪 貴賤の区別なく
 雨に濡れぬは・・・

 「ヴァイスくん。いつもトレーニングは、さぼるそうですね?」
 と、いきなり背中越しにミルディンに声をかけられた。
 「それが、何か?」
 つい声がとがった。彼は全くオレの切り口上にも眉一つ動かす風じゃなかった。
 「ふふふ、今日は是非さぼった方がいいですよ。きみは・・・手首を痛めたでしょう?」
 お見通しだったのか、やはり。一撃をぶち込む時に固くなりすぎてたのを。それともしかしたら、剣さばきを真似ようとしてたことも。
 「・・・力はあるでしょう、だからこそ自分の力を過信してはダメです。両手持ちの太い剣でもね、相手の力や身体をまともに受け止めちゃいませんよ。不器用な人は別ですが(笑)」
と、ミルディンが静かにいった。答えようとしたが、ギルダスの声が先だった。
 「るせ〜ぞ、二人とも出ていってくれ・・寝られやしないじゃないか!・・・今度から俺の部屋は男子禁制にするッ、オネエチャンだけだ!」
 オレは頭を下げて、即座に部屋を後にした。記憶がちょっとづつ戻ってきたせいか、考えすぎて泣きそうになってたから、ろくろく礼も言えなかった。ミルディンとまとめたかのように、二人って呼ばれたのが何となくうれしかった。

 部屋に戻ってから、オレは剣を手入れしておこうと鞘から抜いてみて、驚いた。オレの剣は、昨夜こんなにきれいじゃなかった。それが、ぴかぴかに研いである。寝ている時にどこかから、ギィギィという船の櫂の音が子守歌のように聞こえたのが不思議だったのだけど、その理由がふつか酔いのにぶい頭にようやく飲み込めた。ひがんで生きてきたオレだけど、今日のオレは・・・少なくとも野良犬じゃない。