解説 名鉄パノラマカー
-1961年7月号「鉄道ピクトリアル」の新車情報より-

「鉄道ピクトリアル」記事 私見・現状 解説
6.台車

 FS-335形を用い、空気バネを直接車体へ取り付け、ボルスターと車体をアンカーで結んだ新形式である。
 また、空気バネの横剛性を利用してボルスター・ハンガーを廃止し、特急車の高速運転に充分な乗心地を得ると共に軽量化を図った。 パンクなどに備えて差圧弁及び圧力スイッチを有する。

7.主要機器

 主要機器は何れも5500形を基本とし若干変更を加えたものである。 特色はわが国唯一の高圧パッケージタイプの制御器を用いて、床下スペースを生み出し、オールM編成による冷房設備を可能にしていること。60kVAという大型MGの制御及ぴ、保安のため近代的な設計がなされていることである。
 主電動機は5500形より改良されてTDK-825-1A形となったが特性は変らず、主抵抗器は3相誘導電動機のブロワーにより強制冷却し、スペースを縮小している。
 マスターコントローラーやブレーキ弁など運転室機器はすべて小形化または横型化して、屋上運転室に適合するものとし、OSR(オーバースピードリレー)、BP(ブレーキプロテクション)、LO(ロックアウト)などの表示も横型とした。
 大容量MGはこだまなどでも故障を多発しているが、補償コイル付とし、低電圧リレーにより電圧急変時はMGを切るようにし自信の持てるものとした。
 MGの故障は冷房ストップを意味するが、本車は窓締切のため冷房停止は致命的であり、この点の自信なくしては窓のはめ殺しはできなかったわけである。 補機の操作は全面的に自動化して乗務員の取扱いを容易化した。
 低圧電源の一斉開閉装置を備え、全車両のMG、コンプ、したがってランプ、冷暖房の一斉開閉ができ、また前後切換スイッチ1つの扱いで制御、ドアー電源、前尾灯などすぺて自動的に切換えられ、折返しの扱いが容易且つ迅速として車両の回転率向上に備えた。
 こだまなどではクーラーは1つずつ操作するが、本車ではクーラー、換気扇とも1ヵ所から全車50コのクーラーを一斉に1〜3ノッチに制御でき.機動性を増している。 これら自動化に伴い乗務員の入出庫点検も大幅に簡易化を図った。

8.冷房装置
 クーラーはモデル・チェンジを行なって、モーターのスピートを2倍にして1基の能力を4,500kcal/hに向上し、さらに1両7コより8コに増強した。
 特に先頭車は乗客の集中を考え、大型フロアークーラーを前端テーブル内において1両13冷凍トンと日本最高の冷凍能力を更新した。
 5500でも冷房能力は充分であったが、これにより予冷や乗客量の急変時などに対処して一層とゆとりを持つこととなった。
 喚起ファンは5500形の4コより6〜8コに増強し、医学の専門家の指導により詳細な設計を行い、ただ冷えるのではなく、車内空気の汚れを防いで真に快適に保つように留意した。
 冷房制御については窓締切りの上、ラッシュ輸送があるので春秋季はラッシュ冷房、夜行特急は暖房という機動性が必要となるので、この点迅速且つ自由に行えるよう設計した。また、サーモスタットによる自動制御も従来クーラー全部を切入していたが、2ノッチ(半減)に戻すだけとして温度の加減の円滑化を図った。
 なお、これら動作の状態はクーラーについた2コの緑色灯(フロアー型はテーブル台上にある)により見ることができる。
「台車」についても、知識がないので、解説出来ません。約40年経った今でも昨今の新造車と比べて遜色のない乗り心地だと思います。

 また、「クーラー」の話になりますが、パノラマカー、5500系のクーラーは本当に良く効きますね。それと、クーラーの一括制御はこの時がはじめてなんですね。JRの古いタイプの特急列車に乗ると車掌がクーラーの調節を各車両ごとしているのを今でも見ますから。
 また、この当時に「窓のはめ殺し」を行ったのは特筆すべき点です。

「医学の専門家の指導」・・・これも“おもしろい”話です。今でこそ、「クーラー」から「エアコン」へ、「人間工学」を考えてより快適な車内空間を目指して取り組んでいますが、この当時「クーラー」自体普及していなかった時代、いち早く「快適な車内空間」に取り組んでいたんですね。


(快適な車内空間。四角いクーラーが目立つ)


車掌室。ここで冷房制御を行う)

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