第25章 鉄アレイ

 右から繰り出した一閃はジャンプされてかわされる。そのまま斬審は上から剣を繰り出してくる。それを横っ飛びにかわす。そのまま体を転がすと斬審に向かってメライクルズ を放つ。複数の雷球は斬審に向かって収束する。雷球が斬審にあたると煙が巻く。
 「・・・」
 煙が巻いている。少しずつ煙が晴れていく。
 そこには斬審の姿は無い。
 「まったく・・・あなたは芸の無い人ですね・・・」
 上から垂直に斬審が降りてくる。その手には剣が垂直に下ろされている。
 「芸が無いのはどっちだが・・・」
 そう言うとメライロームを発動する。
 「ぐ・・・」
 空中に浮いている斬審はそのまま雷の竜巻に巻き込まれて上に吹っ飛ばされる。
 「これで終わると思うな!!」
 そう言うとギライドーンを発動する。
 斬審は追い討ちをかけるように上から雷が落ちてくる。
 そのまま落ちてくる斬新に向かって突進する。
 「とどめだ!!バクスラッシュ」
 走った状態で発動する。 袈裟斬りした後、逆袈裟に斬る。
 俺の後ろで斬審が倒れる。
 「レベル自体がちがったな・・・」
 そう言うと剣を鞘に収める。
 「俺は・・・俺は・・・まだ・・」
 「ん?」
 後ろを振り返る。
 「俺は・・・」
 斬審が瓦礫の中から立ちあがる。
 「俺は・・・負けるわけにはいかないのだ・・・」
 「負けるわけにはいかない?」
 斬審はうなだれた顔をグッと正面に向ける。その顔は死人のようだ。
 「俺は・・・グッ!!」
 斬審は目を見開くとそのまま倒れる。
 「なっ・・・どうしたんだ?」
 斬審に近づく。斬審はピクリとも動かない。そのまま体の周りに黄色い帯びのようなものが回転するとそのままはじけて消えていく。
 「ど、どうして・・・これは・・・」
 「データドレイン・・・主な能力は平たく言えばデータの改竄・・・」
 いつのまにか斬審が居たところを挟んだ所にフードを被った男が立っている。
 「あんたは?」
 「どうもはじめまして・・・と、ゆっくり挨拶をしたいところだが・・・」
 と言うとフードを被った男は時計台の方を見る。
 俺もその方向に目をやる。
 そこには金色のような鉄アレイ型のモンスター・・・
 「な、なんだ?こんなモンスターは見たことが無いが・・・」
 「気をつけろ・・・あいつの触手にはデータドレインと同じ効果がある・・・」
 モンスターがこちらにゆっくりと向きをかえる。
 触手がゆっくりと伸びてくる。
 「なんだ・・・おとな・・・」
 と、思った瞬間一気にすばやく触手が伸びてくる。
 ・・・やばい!!
 後ろに下がろうとするが瓦礫が足に引っかかって転んでしまう。
 しまった!!
 触手がすばやく俺を狙って飛んでくる。
 だめか・・・まぁ、放浪AIのような生活も悪くないかもしれないな・・・
 ズパ・・・
 触手が切れた音・・・
 「お〜い、大丈夫?」
 後ろから声がする。
 後ろを振り向くとユキとソフィアが走ってきている。
 前を見るとシンが襲ってくる触手を次々と切り払っている。
 「大丈夫ですか?」
 シンはまだ口元に笑みを浮かべている。
 いつのまにかフードの男はいなくなっている。
 「はっ!!」
 シンは気合とともに鉄アレイの棒の部分を真っ二つにする。
 「やった〜お父さん。すっご〜い♪」
 そう言うとユキは俺を飛び越えてシンの元に向かった。
 「大丈夫?」
 そう言うとソフィアは俺の隣に来た。
 「ああ、大丈夫だ・・・」
 そう言うと俺は立ちあがる。
 ソフィアは心配そうな顔をしている。だが、俺が見たのはソフィアの後ろだった。そこには鉄アレイがいる。
 「あぶないソフィア!!」
 そう言うと彼女を抱きしめると体を回転させる。俺の背中を盾にした形になった。
 「ちょ、ちょっと・・・どうしたの?」
 ソフィアは気づいてないようだ・・・
 「どうしたの?」
 ユキが近づいてくる。
 ・・・ん、なんだ・・・目が・・・かすむ・・・
 リオンの背中には鉄アレイの触手が突き刺さっている。
 目の前が真っ白になる。
 俺が認識できたのはそこまでだった。


     第26章 認識

 「ここは・・・どこだ・・・目の前が真っ白だ・・・何も感じない・・・」
 「感じない?それは本当かな?」
 別の声がする。
 「あんた・・・だれだ・・・?」
 「感じるとは思わないか・・・」
 感じる・・・?
 ポン
 ・・・音?
 波紋が広がるイメージが頭に入る。
 「波紋・・・?」
 「そのイメージを大切にするんだな・・・」
 「おい!!あんたは・・・」
 だが、返事は返ってこない
 「・・・俺は・・・結局・・・なんなんだ・・・だれだ・・・俺は・・・わからない・・・」
 頭を抱えて悩みたくなる。
 「・・・おれは・・・」
 「・・・あなた自身・・・それ以外の何者でもない・・・」
 また、別の声がする。今度は少女の声だ。
 「誰だ・・・!!」
 すると暗闇の中から光が現れたと思うと1人の少女が現れた。


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