第29章 突入
「つまり・・・データー量が急激に上がった場所があるから・・・そこに行くと、そう言うこと?」
そう言うとユキはシルフィスの方に顔を向ける。
「そうだが・・・少々問題がある」
「問題?」
ユキはシルフィスに更に聞き返す。
「プロテクトされているんだよ・・・」
「プロテクト・・・」
今度はソフィアが意味ありげにつぶやく。
「これを突破するためには・・・」
「ゲートハッキングですね・・・」
今度はシンが答える。
「そう、それで・・・ゲートハッキングするために必要なのが・・・」
「腕輪じゃな・・・」
後ろから斧を担いだクロカスが答える。
「だけど我々には腕輪がない・・・そこで、これが登場・・・」
そう言うとシルフィスは手に持っている『魔剣カラドボルグ』を掲げる。
「Ω 異形なる 者達の 驚異 でケニーがデータドレインされたときに落とした物・・・
この、武器にはリオンと同じく武器に能力が付加されている・・・ケニーはすでに本をインストールしていたみたいだな・・・」
シルフィスは『魔剣カラドボルグ』を見ながら口元に笑みを浮かべる。
「その能力は・・・ゲートハッキング・・・」
この『魔剣カラドボルグ』は先ほど、アルビレオから受け取ったものだ。
「それでは・・・頼めるか・・・ソフィア?」
シルフィスは後ろを振り向きソフィアを見る。
「えっ、私?」
ソフィアは顔に驚きの表情を浮かべている。
「プロテクトされたところに入るには絶対に必要になるウイルスコア・・・だが、我々にはそれがない・・・
そこで、パーティごと移動できるゲートハッキングを持つ『魔剣カラドボルグ』と
どんなエリアでも移動できる放浪AIとの能力を合わせた方法だ・・・理解できたか?」
「はい、わかりました・・・」
そう言うとソフィアは『魔剣カラドボルグ』を受け取ると目つぶった。
すると5人は転送消滅した。
第30章 決意
転送されたところは石で出来た遺跡だ。そこは大きな部屋で奥の方に祭壇がある。
「ここは・・・どこ?」
ユキが声を潜めてシンに聞く。
「どこでしょう・・・ダンジョンということは確かですが・・・」
シンもあたりを見回す。
「さて・・・いまさらだが・・・覚悟は良いか?」
シルフィスは全員の顔を見渡しながら言う。
「覚悟・・・?」
ユキは顔にハテナを浮かべている。
「俺の覚悟はここで起きていることを知ること・・・そして、今回の事件について知りたいという欲望だ」
シルフィスはそう言うとユキの方をみる。
「ここから先は下手したら意識不明者になる。その覚悟と理由を聞いてるんだ。ここからは生半可の気持ちでは進めないからな」
「ん〜・・・私は、最後まで付き合う!!お父さんも居るし、ソフィアも居る!!怖くない!!」
ユキはそう言うと腕組みしてウンウンと満足そうに2度うなづく。
「私は、リオンの手助けをしたい・・・と、思っています。β版でPKされそうになったところを助けられたのですよ。
理由を挙げるとしたらその恩返しですよ」
そう言うとシンは祭壇の方に目をやる。
ソフィアが1歩前に出る。
「私は・・・命を助けられた・・・そのおかげで私は今、ここに居る!!
彼のおかげで私は居る!!私も彼を助けたい!!・・・そして・・・」
そこまで言うとソフィアはうつむく。
「わしのばんじゃな・・・」
そう言うとクロカスは顔を上げる。
「わしは・・・こちらの世界に閉じ込められたソフィアをあつかましいかもしれんが孫の用に感じていた・・・
それを助けてくれたんじゃ・・・それに、わしはあやつを気に入った・・・
そんな奴をここでみすみす死なせるわけにはいきたくないんじゃ・・・」
クロカスの目には光が輝いているようだ。
「ん・・・それじゃ行きますか!!リオンを助けに!!」
そう言うとシルフィス達は祭壇の方に歩いていった。