第11章 8相

「なんなんだ・・・こいつ・・・」
ケニーは驚愕する・・・
そのモンスターは見た目はダライゴン、しかしモンスター名はグ*@ゴ&・・・バグとしか思えない・・・
「ダライゴン・・・だよなこいつ・・・」
そうだとしか思えないが・・・なにやら光っている・・・
「ケニー・・・聞いてるか・・・」
モンスターに目が釘付けのままケニーに話しかける。
「あ、ああ・・・聞いてるぜ・・・開いた口が塞がらないけどな・・・」
リアンはそこまで聞くとケニーに武器の事を話した。
「そんなやばいもんなのか・・・」
「悪かったな・・・黙ってて・・・」
「それとこれとなんの関係があるんだよ!!」
ケニーは結構イラだっている。
「とりあえずアイテム欄をみろ!!本だ!!」
俺はそこまで説明する。
ケニーの動きがとまる。どうやらアイテム欄を見ているのか、驚いているのかどちらかだ。
「なんだよ、このアイテム・・・文字化けしてわからないぞ・・・」
「いいから使ってみろ・・・」
「バグらない・・・よな?」
やはりケニーは心配そうだ。
いきなりモンスターが噛みつこうとしてくる。
それを剣で弾く、いくらバグっていても雑魚には変わらないが・・・・HPが無限とは・・・
「大丈夫だ・・・たぶん・・・」
「どっちなんだよ!!」
ケニーはもうすでに怒っている・・・
「じゃあ、俺がインストールするから、こいつを押さえてろ!!」
「・・・お、おう」
俺と入れ替わりにケニーがグ*@ゴ&に立ち向かう。
その間に本をインストールする。PCの剣に青白い光が宿る。
「これだけかよ・・・」
リアンは落胆する。
「とりあえず攻撃してみる・・・ケニー・・・どいてろ!!」
そう言うと前衛に出る。ケニーは後ろに下がる。
モンスターをその剣でジャンプして上から斬りつける。
ズパッ
・・・モンスターが正常な状態に戻る・・・
「すげぇじゃねえか・・・」
ケニーが喜びの声を上げる。
俺自身喜びたいけど・・・とてつもない脱力感が体をおそう・・・
キャラクターのHPとSPが一気に減る・・・それだけではない・・・現実の俺にも疲労感がおそう・・・
ざっと10分の1だろうか・・・
「ケニー!!敵はまだ生きている!!とどめを刺せ!!」
「お・・おう」
ケニーはまだ喜びに浸っていたらしい・・・
ケニーの剣がダライゴンを真っ二つにする。
ダライゴンの断末魔の叫びがダンジョン内にこだまする。
「それにしてもすごいなそれ・・・俺もインストールしようかな・・・」
「やめとけ・・・HPもSPも10分の1になるし、現実の本体にも吐き気と脱力感がくるぞ・・・それでもやるか?」
「・・・遠慮します・・・」
・・・やっと気分が落ち着いてくる・・・
「ケニー、『帝の気魂』と『完治の水』をくれないか・・・」
「あ、ああ・・・」
ケニーは『帝の気魂』と『完治の水』を俺に使う・・・それとともに現実の吐き気や脱力感も消える。
・・・PCのダメージと一緒に現実の吐き気や脱力感も無くなった・・・これは・・・やばい・・・
「ケニー・・・」
「ん、なんだ?もう大丈夫なのか?」
「さっきの本捨てろ・・・」
声にすごみをきかして言う。
「な・・・なんでだよ」
リアンはケニーに今起こった体の症状をさらに詳しく話す。ケニーは最初の疑問の表情からだんだんと驚きの表情になっていく。
「やばいな・・それ・・」
「だろ?やめとけよ・・・」
「今、捨てた・・・」
ケニーは話を聞いたとたんに捨てたらしい。
「それにしても・・・こいつ、なんだろうな・・・」
俺の問いにケニーは少し考え込んだ後・・・
「たぶん・・・噂のウイルスバグ・・・だろうな」
「ウイルスバグ?なんだよそれ・・・」
さらに聞き返すとケニーは少し考えた後
「それは、俺に聞くよりも・・・」
ケニーがそこまで言うと周りにノイズが走る。
「な・・・なんだ?」
「これは・・・」
ケニーは驚いた様子だ。
その間に周りのダンジョンが石壁からなにもない風景に変わる。
・・・いや、殺風景と言う表現の方が正しいか・・・
殺風景の景色に逆様の建物などが浮かんでくる。脳裏に逆様の男の姿が浮かぶ。
「おい、リアン聞いてるか!!」
ケニーの言葉に俺の思考は頭の中から現実に戻される。
「『精霊のオカリナ』を使え!!」
ケニーはあわてている。
「あ・・・ああ、わかった・・・」
俺はアイテム欄から『精霊のオカリナ』を取り出そうとする。すると突然画面にノイズが走る。
「なっ・・・」
アイテム欄が勝手に閉じられる。
「おい!!なにやって・・・」
ケニーの体が宙に浮かぶ、
「なっ、なんだよこれ・・・」
ケニーは驚いた様子でいる。突然ケニーの前にモンスターが出現する。
「魔法陣は無いはずだが・・・」
脳裏にスケィスの姿が浮かぶ。
「ま・・・まさか・・・」
ケニーの前にスケィスの腕輪と同じ物が浮かぶ。
「ケニー逃げろ!!」
俺はケニーに向かって叫ぶ。
「だめだ!!うごけねぇ・・・」
モンスターが完全な形で浮かぶ。その姿は異様だ。
「ケニーをはなせこの葉っぱやろう!!」
モンスターは確かに葉っぱのような形だが、どちらかというと枝だろう。
枝に葉がついているという印象だ。あきらかに8相の内の1人だろう。そのモンスターに斬りかかる。
ダメージは表示されたが、HPは文字化けしている。名前は・・・
「・・・メイガス・・・」
そう書かれている。
「リアン無駄だ!!こいつのHPは無限だ。さっきのモンスターと同じだ。はやく逃げ・・」
ケニーはそこまで言いかけてスケィスと同じスキルをうける。
「ケニー!!」
たまらず叫ぶ。だが、そこにはケニーの姿はない。
「きさまぁー!!」
一気にメイガスの前に躍り出る。そこでスキルを発動する。
「バクスラッシュ!!」
火属性のスキルがメイガスにダメージを負わせる。
と、言ってもHPが文字化けしているからどれだけのダメージを与えたかわからないが・・・
「こいつ・・・これももってけぇ!!」
バククラックを発動する。ジャンプして一気に切り落とす。それでもメイガスはダメージを受けた様子はない。
くそ・・・強い・・・
「リアン!!」
急に名前が呼ばれる。ケニーと俺しか居なかったはずだが・・・まさか、ケニーか?
だが、そこには少し色黒の重槍使いが1人だけだ。
「ア・・・アルビレオ・・・?」
「はやくこっちに来い!!『転送』スキルを使う!!」
アルビレオに向かって走る。後ろからメイガスが追いかけてくる様子がない。
「なんで・・・お前・・・」
アレビレオに問いかける。
「理由は後だ。『転送』するぞ・・・」
アルビレオはそう言うとスキルを発動する。俺とアルビレオは光の輪に包まれた。


     第12章 旧知

「何でお前、あのエリアに居たんだ・・・?」
俺の問いにアルビレオは少し黙る。
「『異様なデータが流れ込んでいる』と言うバグ報告があった・・・」
「『異様なデータ』ねぇ・・・」
頭に真っ先に浮かんだのはスケィスとメイガスの姿だ。
「そう言えば・・・そっちはどうだよ・・・」
俺のそっちとはCC社の事だ。
「お前もCC社辞めた後なにやってる?」
「きままなフリータだよ・・・」
俺達が居るのはΔサーバーのルート・タウン、マク・アヌだ。
その街の特徴とも言える橋の上でアルビレオと橋から見える町並みを見ている。
「そっちはどうよ<碧衣の騎士団>の騎士長さん・・・」
「・・・」
アルビレオは黙る。
「・・・おい」
「あっ、ああ・・・悪いな」
なにを考えているのか・・・なにかまずいことでも聞いたのだろうか・・・
「それで、あのエリアに来たのはバグ報告だけじゃないんだろ?」
「・・・」
また黙る・・・
「たぶん・・・これだろうな・・・」
そう言うと『デュランダル』を軽く上に上げる。光に反射して『デュランダル』が光る。
「不正なアイテム、しかも今話題のウイルスバグを倒すことが出来るアイテムときたらCC社がほしがるからな・・・」
「あとで連絡する・・・」
アルビレオはそれだけ言うとログアウトした。


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