第15章 1st

 すぐに1stキャラクターを選ぶとログインする。
 マク・アヌのカオスゲートに出ると俺の1stキャラクター、リオンを走らせる。まだ人混みがある。
人混みの前まで行くと高く跳躍する。橋の中央にはまだ騎士が3人と少女が1人、倒れたPCが1人。
 倒れたPCはリアンだ。
 「斬審さん、削除しないんですか?」
 「いや・・・削除する前にこいつを餌にしてさきに1stキャラを連行したい・・・」
 「そうですか・・・」
 このキャラは跳躍と言っても短時間の飛行が可能だ。デザインはさほど変わらない。
変わると言えば黒い金属製の鎧に機械じみた突起物、それと1番変わるのが属性が雷で職業が機械騎士と言うだけだ。
 この機械騎士というのはβ版の隠し職業と言えばそうだが、β版の時に出たCC社の提案した職業だ。
なぜ、俺がこのPCにこの職業がついているかというと理由は簡単だ。
CC社の日本語版の移植作業に参加していたときに俺が提案した職業だからだ。
つまり、短期間しかなれるチャンスが無かったのだ。
短期間なのは設置したのが2時間と49分だけだったからだ。この期間が終了した時間がβ版が終了した時間だ。
 「おい、お前・・・」
 空中から声をかける。
 「おい、あいつとんでねぇか?」
 野次馬の中から声があがる。
 「機械騎士?・・・まさか、健司さんか?」
 1人の騎士が俺の名前を呼ぶ。
 「ここは、あくまでネットゲームの中だ。本名はやめてほしいな・・・」
 「ずいぶんと派手な登場ですね・・・健司さん・・・」
 「本名で呼ぶなって言ってるんだろう・・・」 
 ゆっくりと少女の前に降りる。
 「まぁ、俺が健司だというのがわかってるんならレベルの差がわかるな?さっきのリアンとはレベルが違うぞ・・・」
 そう言うと青色に輝く剣を斬審に向ける。
 「さて・・・どうする?」
 俺の問いかけに斬審が小さく舌打ちする。
 「これは、CC社への反乱ですよ・・・」
 「反乱ねぇ・・・」
 反乱という言葉を口の中で確かめる。
 ネット犯罪にはならんだろう・・・
 「ど、どうします?斬審さん・・・」
 騎士の1人が斬審に聞く。
 「お前等・・・3対1ならこちらが有利だ・・・いくぞ!!」
 左側の騎士が俺に左側から攻撃を仕掛ける。それを右手にもっている剣で受け止める。
そして、機械騎士の戦闘モードに入れる。この戦闘モードはおまけみたな物だ。
背中の突起物から機械装甲が出てくる両手に回り体、足に行くと顔に兜のようになる。
眼の部分は開いている。右手の剣は手の甲の部分に設置される。左手は開いている。全身黒の装甲板で覆われている。
 「それが、機械騎士ですか・・・」
 斬審の顔に少し汗が吹き出ている。
 「・・・この姿で戦って負けたことはない・・・覚悟しろよ!!」
 右側の騎士も俺に剣を突きの状態で攻撃してくる。その剣が脇の下をかすめる。
左の騎士の顔を左手でクロスさせて顔をつかむ。
 「あ、あがが・・・」
 顔を捕まれた騎士が苦しそうにもがく。剣はすでに落として、両手で俺の腕を握る。
俺の剣と刃を交えている騎士に顔をつかんでいる騎士を投げつける。剣を持った騎士の剣が仲間の騎士に刺さる。
 「て、てめぇ・・・」
 顔を捕まれていた騎士はすでに仲間の剣によって『おばけ』になっている。
 「自分で刺したんだろう?別に俺が刺したわけじゃない・・・恨むんだったら自分を恨むんだな・・・」
 騎士が逆上すると俺に斬りかかる。それを刃が触る前に左手で顔をつかむ。そのまま投げ飛ばす。
 「げっ、ぐふ・・・」
 騎士は斬審の足下に倒れている。
 「大丈夫か・・・?」
 斬審は仲間の騎士に肩を貸す。
 「す、すいません」
 騎士は斬審に謝る。
 「今日のところは引き下がります・・・ですが、この事はCC社に報告させてもらいますよ」
 そう言うと斬審と2人の騎士はログアウトした。


     第16章 AI

 「あの、助けていただいて・・・ありがとうございます・・・」
 少女が俺におじきする。
 「いいよ、気にするな。俺はあいつ等がむかついただけだから・・・」
 そういうと俺はそう言うと少女の顔が明るくなる。
 今の俺は機械の鉄版が無い状態の鎧を装備した状態だ。
 「とりあえずキミに聞きたいことがあるんだけど・・・」
 そう言うと少女の顔は少し暗くなる。
 「キミ・・・放浪AIだよね?」
 そう言うと少女は完全に下を向く。
 「あっ、だからどうとかじゃないから気にしなくていいよ」
 そう言って笑いかけると少女は俺の顔をじっと見る。
 「な、なんだよ・・・」
 見つめられると少し照れる。改めて周りを見るとさっきまでの野次馬はすでに数人に減っていた。
 「とりあえず・・・放浪AIで良いよね?」
 「人は私のことをそう呼ぶわ・・・」
 ここでは話づらい・・・
 「俺のホームに来れるよね?こっちだ」
 そう言うと少女を先導してホームに向かった。
 ホームの前に来ると少女を俺のホームに入れる。ケニーのホームはあの後、俺が使っている。
 「とりあえずここに居れば安全だから・・・」
 「・・・うん」
 少女はホームにある革製のソファーに座る。
 「それじゃ、詳しい話は今度ね・・・俺、今日は寝るから・・・」
 「・・・うん」
 そう言うとホームから出る。
 「・・・ん?」
 なにやら画面にノイズが走る。続け様に何回も・・・
 「なんで・・・ノイズが・・・これじゃ、まるで・・・」
 ・・・8相が出てくるようじゃないか・・・
 そう思っていると画面が落ちる。
 「あっ!!」
 画面は<ザ・ワールド>の画面どころか画面自体が起動していない。
 ・・・なんなんだ・・・
 そう思うと窓を開け、外を見る。そこからは夜景がキレイな横浜が見えるはずだが・・・建物からは光がない
 「停電?」
 それだけじゃない・・・至る所で火災も発生している。
 ・・・とりあえず外に出るか・・・
 俺はマンションの部屋から出るとそのまま下の階に降りていった。


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