第17章 拉致

 あたりは真っ暗だ・・・なにも見えない・・・
 「健司さん・・・ですか?」
 「はい?そうですが・・・」
 そう言うと声のする方を見る。そこは暗くてなにも見えない。
 「すいません、ちょっと暗くて見えません・・・」
 「それにしても、びっくりしましたね・・・まさか、停電が起きるなんて・・・・」
 相手は俺の言葉に返答はしないで話を進める。
 停電か・・・考えるとおかしい・・・今日は嵐も無ければ特に事件もない。停電する理由がない・・・
 「ま、これが停電とは限りませんけど・・・」
 「ん?どういうことですか?」
 そう問いかけると痺れたような痛みが体に走る。
 「つ・・・」
 バチバチという音が耳障りになっている。
 ・・・スタンガン・・・
 「おい、なにすんだよ!!」
 後ろ向き際に俺を襲った奴を見る。だが、暗くて人相も性別もわからない。
 「さっさと寝てろ!!」
 そう言うとさらにスタンガンを背中に押しつけられる。
 「くぅ・・・」
 効く・・・パソコンのやりすぎで痛めた腰には効く・・・きもちい・・・ような気がする。が、それも一時の幸せですぐに痛みに変わる。
 「さっさと寝てろ!!」
 次は鈍器のような物で後頭部が殴られる。眼の前がチカチカする。
 「ほれ、運ぶぞ」
 そう言うと俺を駐車場の方に運んでいく。チカチカする目で俺が運ばれてくだろう車を見る。
セダンタイプの黒い車だ。それしか確認できない。俺はナンバープレートを見る暇もなく意識が飛んだ。


     第18章 CC社

 目が覚めると真っ暗でなにも見えない。
 ・・・たしか、この車はセダンだよな・・・
 誰に問いかけることもなく頭の中で記憶をたどる。するとセダンと言うことが頭の中で思い出す。
 「あってろよ・・・俺の記憶・・・」
 やっぱり心細い・・・誰もいないはずなのに問いかけてしまう。
 ・・・たしか、ここら辺に・・・
 自分の体を少し動かすと手探りでコードを探す。
 ・・・大半のセダンには・・・あった!!
 コードを見つける。それを思いっきり引っ張る。
 ・・・ガチャ
 鍵の開く音が聞こえる。
 うまくやったじゃん・・・俺・・・
 鼻歌が出てきそうだ。
 ゆっくりとトランクを開ける。そこは暗くどこかの地下駐車場だろう。
 「はぁ〜」
 見覚えがある・・・
 「ようこそいらっしゃいました!!健司さん!!我がCC社にようこそお越しいただき・・・がふ!!」
 車のトランクを開けるとやたら元気な社員を殴り飛ばす。
 「なにをするですか!!健司さん!!」
 「元気そうじゃないか、寛司さんよぉ」
 鼻面を押さえている社員、寛司はイベント企画部の人間だ。
 ちなみに俺はプログラマーだった。
 「でも、退屈せずに来れたでしょ?このCC社に・・・」
 俺の後ろを振り向く。そこには男が2人居る。2人とも『ども』と言う感じに頭を下げている。
 「あれも、そうか?お前のアイディアか?」
 「すっごいアイディアでしょ?健司さんには楽しんでCC社に来てもらおうと・・・イタ!!」
 額にデコピンを喰らわす。寛司は赤くなった額をなでながら
 「暴力的なところは変わってませんね・・・」
 と言う
 「お前にだけだ・・・」
 そう言うと「用件はなんだ?」とうながす。
 「今回、健司さんに来てもらったのは・・・」
 「暇つぶしだと言ったら蹴るぞ・・・」
 寛司は少し黙る。どうやらそう言おうとしていたらしい。
 「わかりました・・・今回、健司さんに来てもらったのは話があったからです」
 「誰からだよ・・・」
 俺がぶっきらぼうに聞くと
 「・・・度会さんですよ」
 寛司は少し迷ったようにして答えた。
 度会・・・<碧衣の騎士団>のアルビレオのプレイヤーだ。
 寛司はドアをあけると俺を誘導しながら会社に入っていった。
 ・・・はぁ〜
 ため息をつくと寛司の後についていった。


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