泌尿器科情報局 N Pro

症例015-3

解説2

急に出現した排尿症状で来院した患者さんです。UDSでは、DUとBOOが指摘されました。1回排尿量が少ないとの訴えのとおり、UDSでは残尿のために1回排尿量は150mlと減少していました。急に排尿量が減ったということなので、急に残尿量が増えたことを疑います。しかし前立腺はごく軽度の肥大のみであり、ここまでの情報だけでこの患者さんの病態を説明するのは難しそうです。

そこで、少なくとも閉塞の原因を調べることができると考え、膀胱鏡を予定しました。

膀胱鏡(膀胱頚部)

膀胱頚部がせりあがり、膀胱頚部が非常に狭くなっています。膀胱鏡は難なく通過し、膀胱内は特に所見はありませんでした。よって膀胱頚部狭窄と判断しました。

急に症状が出現したことは、単にもともとの病態がわずかに悪化して残尿が増加することでも説明が可能ですので、単に膀胱頚部狭窄によるBOOと特発性もしくは加齢によるDUが合併したのかもしれません。初診時に症状があまり詳細に記録されていなかったので、ここからは憶測の話になってしまいますが、飲酒や風邪薬などによって一時的に尿閉に近い状態に陥り、それによってDUの状態となり、残尿が出現するようになったのかもしれません。

いずれにしても、残尿は250mlと相当な量であり、尿排出障害は重度です。たとえ一時的ではあっても、回復した後もまた同様の状況もしくはさらに悪化する可能性もあり得るため、手術をしておいてもよい状況です。

そこで、手術を患者さんに勧めましたが、ひとまず薬物治療での経過観察を希望されました。シロドシンを処方し経過を観察したところ、その後患者さんは元の状況まで戻ったとのことで、そのままシロドシン継続となりました。

残念ながらその後の記録が把握できていないので、DUは回復したのか、つまり残尿量は減ったのかは、わからずじまいです。少なくとも尿閉を来して来院することはありませんでした。