泌尿器科情報局 N Pro

症例026

解説

認知症のある高齢男性患者が、便意頻回、便秘、排尿障害で受診されました。この症例は半年前に泌尿器科を受診しており、尿閉となるような膀胱、前立腺の疾患は考えにくい状況です。比較的急性に近い状況で膀胱直腸障害が出現しているため、脳血管障害や腰部脊柱管狭窄症などの神経因性膀胱を鑑別しておく必要がありますが、脳MRIも腰椎MRIでも所見は認めませんでした。

この症例で注目してもらいたい点は前立腺の形です。半年前と前立腺サイズが違っていますが、その大きな原因は前立腺がつぶされて変形していることです

半年前エコー

今回エコー

なぜ前立腺がつぶれているかというと、直腸内の大量の便塊におされていることがエコーでわかります。

排便管理前後のCTでもその違いはわかります。

排便管理前CT

排便管理後CT

つまりこの症例は便秘によって尿閉となっていたわけです。

摘便、下剤の調整、看護師による定期的な排便誘導などによって排便管理を安定させ、間欠導尿で経過を見ました。徐々に自排尿が回復し、最終的には導尿を離脱して退院してゆきました。このように、便秘は排尿障害の原因となることがありますので、診察の際は排便の状況も把握するように心がける必要があります。

なお、その後この患者さんは心筋シンチでレビ-小体型認知症の疑いと判定されました