泌尿器科情報局 N Pro

症例029-2

解説

それほど前立腺が大きくない、糖尿病のある男性患者さんです。

UDS

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1. 記録状況
括約筋筋電図は測定できていません。膀胱内圧、腹腔内圧ともにうまく測定できています。サブトラクションも良好にとれていますが、蓄尿期の排尿筋圧が安定していません。これは蓄尿期の腹腔内圧の上昇の影響であり、これは直腸の収縮を拾っているためです。

2. 蓄尿期
Capacity 200ml
Compliance 途中で排尿筋圧が上昇と失禁があるため、正確なコンプライアンスとはいえませんが、Max Capacityの時点で膀胱容量58ml、排尿筋圧が8cmH2O程度ですので、コンプライアンスは7ml/cmH2Oとなります。
DO FDを訴えるずいぶんまえから排尿筋圧の上昇があります。DOありです。
尿意 括約筋筋電図で隠れてしまっていますが、FDのすぐ後にNDを訴えています。尿意切迫感としてよいでしょう。その際、排尿指示はしていないのですが患者さんは腹圧をかけており、その後に失禁が始まっていますので、我慢をあきらめて排尿をしようとしてしまったのかもしれません。

3. 排尿期
Qmax 排尿はできていませんが、途中で排尿した時点では4ml/s程度です。
PVR 不明です。
Pdet DOでの排尿筋圧上昇ですが、Pdetは60cmH2Oまで上昇しています。しかし、腹圧をかけて排尿をし始めたところ、すぐに排尿筋圧は低下してしまい、PdetatQmaxは25cmH2O程度です。
腹圧 最後の排尿指示の時には腹圧をかけようとしていませんが、途中の排尿では腹圧をかけて排尿が始まっています。排尿の始まりだけ腹圧をかけるのは、よくある排尿パターンです。

ノモグラム

排尿筋収縮力 VW
下部尿路閉塞 I

しっかりと蓄尿して排尿しようとした状況が再現されていないので、収縮力の判定をそのまま鵜呑みにしてはいけません。しかし閉塞は無い点については採用してよいと思います。

UDSサマリー DO+ DU+? BOO-

その後、プロピベリンを中止の上、ジスチグミン(ウブレチド)が開始されました。自分であれば、どのような症例に遭遇したとしてもウブレチドを処方することはありませんが、この時の担当医は糖尿病による排尿筋低活動のために残尿があり、そのために頻尿を来していると考えたのでしょう。

しかしジスチグミンのためにさらに頻尿が悪化しジスチグミンは中止となりました。そしてUDSが再検となりました。

UDS

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やはり括約筋筋電図はうまく拾えていません。今回は失禁はなく、排尿指示の後に自排尿がありましたが、機械の不調のためQuraが記録できていません。

UDSを判断してください。