泌尿器科情報局 N Pro

症例029-3

解説2

UDS

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1. 記録状況
括約筋筋電図は拾えていません。Quraは測定できていません。膀胱内圧、腹圧は測定できており、おそらくサブトラクションも良好にとれていると思われます。若干腹圧が安定しないのは、やはり直腸の収縮を拾ってしまっているのかもしれません。

2. 蓄尿期
Capacity 170ml
Compliance 良好
DO FDの前に排尿筋圧が上昇しておりDOありです。
尿意 DOの出現の後にFDの訴えがあり、FDから、ND、Max cyst capまで続けて訴えています。尿意切迫感と考えてよいと思います。

3. 排尿期
Qmax 測定できませんでした。
PVR 不明です。
Pdet DOで上昇した排尿筋圧は4分5秒の時点で最大の40cmH2O程度となり、腹圧をかけた後に、急に低下しています。これは前回のUDS途中の排尿パターンと同じ動きが再現されたと考えられます。Quraが測定できていませんが、排尿は4分10秒の頃にあったと予測されます。やはりPdetはその時点では25cmH2O程度です。
腹圧 排尿開始時に腹圧をかけたと予想されますが定かではありません。

UDSサマリー DO+ DU+ BOO-

経過
経緯は不明ですが、その後前立腺肥大症手術(PVP)が行われました。
手術そのものは順調に行われましたが、手術後も自覚症状の改善はなく、残尿も減少しませんでした。

エコー

残尿200ml

その後通院が途絶えてしまい、診断は確定されないままとなりました。

2回目のUDSでQuraが記録されなかったことは残念ですが、2回のUDSはほぼ同じ結果と考えてよいと思われます。いわゆるDHICです。DUについては糖尿病である程度説明ができるかもしれませんが、70才男性と考えるとここまでDOがしっかりあるのは少し珍しい様に思います。エコー所見を見返すと膀胱壁が軽度肥厚しており、しかも残尿があるのにも関わらずDOが比較的少ない膀胱容量で出現しているなど、なにがしかの神経障害を疑いたくなります。直腸圧が不安定な点も多少その疑いを強くします。