泌尿器科情報局 N Pro

症例038

解説

尿閉を3回繰り返した患者さんです。やっと精査加療の勧めに応じUDSが行われました。UDSの目的は前立腺肥大症手術の適応の確認です。

UDS

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1. 記録状況
EMGは記録がうまくできていないようです。今回の症例提示のポイントは、一見サブトラクションは良好に見えますが、よく見ると排尿期の終盤でサブトラクションが崩れてしまっている所です。何が起こったのでしょう。サブトラクションが崩れる直前、排尿の中盤04:00の時点で、Pvesが急に低下しています。これは、Pvesを計測するカテーテルの先端が、排尿によって位置がずれたために起こったと思われます。排尿期の終盤ではPvesは下がりきらず25cmH2Oあたりを前後します。これはカテーテルの先端が前立腺前部尿道あたりにずれたための圧と考えられます。Pabdにある腹圧をかけた時の圧上昇は1/3程度しかPvesでは拾われていません。よって、UDSを判断する場合、04:00以降のPves、Pdetは正確な数値からはずれていると考えて判断してゆきます。なお03:30の時点と04:30でのPvesの鋭い波は、排尿しようとした時にカテーテルが揺すられたための変化です。

2. 蓄尿期
Capacity 160ml
Compliance 良好
DO なし
尿意 FDからNDはやや近いですが、おおむね正常パターンと思われます。
ちなみに、Pves、Pabdの小刻みな波は、呼吸による腹圧の変動です。

3. 排尿期
Qmax 7ml/s程度
PVR 0ml
PdetQmax 70cmH2O
腹圧 排尿の開始時にわずかに腹圧の動きがありますが、ほぼ排尿への影響はありません。排尿の終盤で短時間ですが数回腹圧をかけています。

ノモグラム

後半部分、つまりPdetが下がった部分は判断に用いません。ノモグラムの右寄りの部分を採用します。
排尿筋収縮力 N-
下部尿路閉塞 IV

UDSサマリー DO- DU± BOO+

尿閉後にUDSを行っているため、排尿筋収縮力が少し低めに出ている可能性があります。

経過
PVP手術が行われ術後の経過は良好でした。