泌尿器科情報局 N Pro

若手泌尿器科医のための排尿記録の見方2

夜間多尿

水分をたくさんとっているから夜間尿量が多くなっている場合は非常に簡単で、水分制限をすれば尿量は減るはずです。糖尿病や尿崩症で無ければ、尿量が十分にあると言うことは脱水では無いことを表していますので、安心して飲水量を減らして良いと患者さんに説明できます。

しかしながら水分を減らしているにもかかわらず夜間尿量が増えてしまうケースは珍しくありません。昼間の尿産生が極端に少ないにも関わらず、就寝後に一気に利尿がつく場合などは、昼間に尿を産生する能力が低下している状況を疑わせます。このように夜間多尿の原因が排尿記録からある程度推定できます。

1回排尿量のばらつき

次に1日の1回排尿量のばらつきを見ます。最大膀胱容量は夜に見られることが多く、昼の1回排尿量は夜間に比べてやや少なくなります。このバランスが崩れ、昼も夜も膀胱容量が変わらない場合、昼夜ともに常に最大量近くまで蓄尿している場合もありますが、頻度的に多いのは夜の睡眠が浅いために、昼と変わらない尿量で尿意を感じているケースかと思います。つまり不眠症が夜間頻尿の原因となっているパターンです。多少、1回排尿量は増減があることが通常ですが、あまりに変動が大きい場合には、尿意の感じ方に波があることが疑われ、過活動膀胱でもよく見られるパターンです。

尿意

尿意についての評価は、教科書的に定まったものはありませんが、ある程度は判断の参考にできると思います。感じている尿意と実際に排尿した尿量が合致しているかに注目します。過活動膀胱では尿意と尿量が合致しないことがよくあります。

常に弱い尿意で排尿したり、尿意を感じずに排尿を行ったりしているために頻尿となっている症例が存在します。膀胱炎を予防するために尿意を我慢してはいけないと信じ込んでしまっている患者さんは珍しくありません。膀胱に尿が少しずつたまっていくにしたがって尿意も徐々に強くなり、ある程度までの尿意を我慢し続け、困らない状況となってからトイレに行くというのが一般的な排尿習慣である、ということを伝えるだけで頻尿が改善する場合もあります。

過活動膀胱

典型的な過活動膀胱では、昼の膀胱容量のばらつきが大きく、尿意も尿量と同調しておらず、強い尿意を感じていても尿量は少ないことがあります。重度の過活動膀胱では弱い尿意での排尿はなくなります。当たり前のことですが、切迫性尿失禁は過活動膀胱を強く示唆します。