泌尿器科情報局 N Pro

若手泌尿器科医のための排尿記録の見方

排尿障害の患者さんは外来で日常的に相談があると思いますが、きちんと患者さんに排尿記録をつけてもらって、判断をしているでしょうか。実際のところ、排尿記録を外来で患者さんにつけてもらっている泌尿器科医は非常に少ないのでは無いでしょうか。しかし、実際にやってみると、説明をする際の医師の手間はそこまで大変ではありませんし、排尿記録の評価もそれほど時間がかかるものではありません。それ以上に患者さんの症状であったり、膀胱機能であったりが、非常に把握しやすくなり、なれてくると排尿記録なしでは、患者さんの治療ができないと思えるほどになってきます。

排尿記録の導入

まずは、資料のページにある、N式排尿記録用紙N式排尿記録の付け方尿量の測り方をダウンロードしてください。これを印刷し外来においておきましょう。記録用紙は2~3日分として、あわせて5~6枚ごとにセットにしておき、外来で患者さんに渡して使用します。病院に理解があれば、尿量測定用の容量目盛つきの紙コップを病院で購入し、患者さんに配布します。その場合は尿量の測り方は不要です。

続いて患者さんが記録してきた排尿記録を判断してゆきます。

最大膀胱容量

第一に判断する点は、最大膀胱容量です。記録の中から最も大きな数字が機能的な最大膀胱容量となります。機能的とつけたのは、あくまでも日常生活の中での最大の膀胱容量を指すからであり、麻酔下であったり、本人が努力したりした場合では最大膀胱容量は変化します。多くの場合、就寝後の第一排尿が、機能的な最大膀胱容量を示すことが多いと思いますが、排尿障害で来院した患者さんの排尿記録では必ずしもそうとも言えません。

1日尿量

続いての注目点は、昼間尿量と夜間尿量を合計した1日の尿量です。N式排尿記録では、昼間尿量と夜間尿量を患者さんに集計もしてもらう形式になっているので、計算間違いが無ければ記録用紙を見て、暗算で1日尿量が判断できます。1日の適正尿量は諸説ありますが、体重あたりにして30~40ml/kgを目安にします。

夜間尿量

続いて、昼と夜の尿量のバランスを判断します。夜間多尿の判断基準は教科書的には1日尿量の3分の1以上と言われていますので、夜間尿量が昼間尿量の半分を超えた場合に夜間多尿と判断します。とはいえ、夜間頻尿の判断には夜間尿量の絶対値も参考にします。昼間多尿がある場合に夜間多尿の判断基準が変わってしまうためです。というよりも、夜間頻尿で受診した患者さんでは、昼間尿量よりも夜間尿量に問題があるかどうかが重要ですので、患者さんの希望する排尿回数にするために、夜間尿量をコントロールするべきなのか、もしくはコントロール可能なのかを判断します。膀胱容量が200mlの患者さんで夜2回までにしたいという場合、夜間尿量を200ml x(2回+起床後の1回)=600mlまでに押さえる必要があるということになります。