泌尿器科情報局 N

PSA検診 前立腺がん検診について

PSA(prostate specific antigen 前立腺特異抗原)とは血液で測定する前立腺のがんマーカーです。数値が高い場合には、がんが見つかる可能性が高くなりますし、数値が低い場合にはがんが見つかる可能性は低くなります。また、すでにがんがあるとわかっている患者さんでは、数値が高くなるということはがんが増えている場合が多く、逆に数値が低くなっていく場合にはがんが治療などによって減っているということが予測されます。見つけるためにも、また、がんの進行を知るためにも非常に有用な血液検査です。近年では人間ドックなどで前立腺がん検診として広く行われるようになってきています。

しかし、海外ではこのPSAを使った前立腺がん検診を、広めるべきではないという意見も出てきています。これはPSAを使った検診が、必ずしも完全に有用とは言い切れないためです。問題点を大きく分けると、以下の様になります。

1.検査の信頼性の問題
 ・ 間違ってがんがあるかもしれないと判定されてしまう問題(偽陽性)。
 ・ がんがあっても検診ではひっかけられない問題(偽陰性)。

2.がんを治療する際の問題
 ・ がんを見つけたとしても、すでに治せない状態である場合。
 ・ ほかっておいても大丈夫ながんを見つけてしまう問題(過剰診断、過剰治療)。

1.検査の信頼性の問題

血液を測るだけですので、PSAの検査自体は非常に簡単に行うことができます。しかし数値だけで判定するため、PSAで分かるのは、がんが見つかる可能性だけです。カットオフ値と言いますが、いくつ以上の数値を異常とするかによって、がんが見つかる可能性は高くも低くもなります。昔はPSA10以上を異常としていましたが、見逃しが多いことが分かり、最近では4以上を異常とすることが一般的です。検診として検査を行っているため、がんを見逃してしまうことをなるべく減らす必要があるのは当然です。しかし逆にがんではないかなりの人数の人が、異常値として検診で引っかかってしまっています。たとえば前立腺肥大症の患者さんなどではPSAが前立腺肥大症のない患者さんよりも高くなります。そのため、PSA検診で前立腺肥大症の患者さんがよくひっかかってきます。

また、PSA検査ではひっかけられない前立腺がんがあることも問題です。非常に頻度は低いのですが、まれにPSAが正常な患者さんが、実は前立腺がんの末期状態であったということがあります。