前立腺がん検診で異常といわれたら(PSAが高いといわれたら)
前立腺がん検診では血液検査でPSAを測定します。PSAが高いといわれたら、それは前立腺がんが隠れている可能性が少し高いという意味です。ただし、実際にがんがある可能性は実はそれほど高くはありません。検診では見逃しを減らすために非常に厳しめに異常値を決めているため、がんではない人も検診で異常と判定されてしまうことが良くあります。
逆にPSAが正常値であれば、前立腺がんが隠れている可能性は低いといえます。ただし、将来も絶対に前立腺がんにならないということではありません。
泌尿器科の受診
PSAが高いことがわかった場合、泌尿器科に受診するかどうかを決めないといけません。泌尿器科に受診しないということはすなわち、早期発見早期治療というがん検診の本来の目的をあきらめるということです。再度検診を受けさらにPSAが上昇したら泌尿器科に受診するという方針だと、次にPSAをはかるまでの間にがんが増え根治できる可能性が下がってしまう危険性を含んでいます。早期発見早期治療を目指す気持ちが無いのであれば、本当ならPSA検診を受けない方がよかったのかもしれません。
泌尿器科に受診する場合、その後に考えないといけないのは、精密検査を受けるかどうかです。前立腺がんの有無を調べるための精密検査は前立腺生検といいます。
前立腺生検
前立腺にがん細胞があるかどうかを調べるための一番正確な方法は、現在では前立腺生検(前立腺針生検)という、前立腺に針を刺し小さな組織をとって詳しく調べる検査になります。一般的には、肛門から細いエコーの機械を入れ、エコーで前立腺を見ながら針を刺します。違和感が多少ありますが、痛みは想像するよりは強くありません。麻酔をしない病院の方が多いと思います。
検査の副作用で一番気をつけないといけないのは、検査後に肛門のばい菌が前立腺に入って熱が出てしまうことです。頻度はそれほど高くはありませんが、まれに敗血症といって体中にばい菌が回ってしまい、命に関わる事態に陥ることがあります。また運が悪いと慢性化してしまうこともあります。検査前の消毒や抗生物質を使って極力起きないようにする努力をしますが、どうしても危険性はゼロになりません。
そのほか、針を刺した場所からの出血が止まらず、おしりから大量に出血したり、尿に出血して血のかたまりで尿が詰まって出なくなってしまったりすることがあります。精液に出血が混じることもありますが、精液の色が違う以外の症状が出ることはあまりありません。前立腺肥大が強い患者さんや尿の出方が悪い患者さんでは、針を刺したことで前立腺が腫れて尿の出方がさらに悪くなり、尿が出なくなってしまうことがあります。痔がある患者さんでは検査での痛みや出血などの副作用が多少多くなるかもしれません。
日帰りで検査を行う病院もありますが、1泊か2泊の入院で検査をしている病院の方が多いようです。病院によっては、針を刺す本数をものすごく増やしている病院や、おしりからでは無くおしりと陰嚢の間から針を刺して検査をする病院もあります。また半身麻酔で検査をする病院もあります。
前立腺生検の前に
前立腺生検には副作用もあるため、PSAで異常が見つかった患者さん全員に前立腺生検を行っているわけではありません。泌尿器科を受診した場合、前立腺生検の前にまずは尿検査やエコー、直腸診を行って、どの程度前立腺がんが疑わしいのか、もしがんがあった場合にどの程度のがんがありそうなのか、などを判断します。エコーでは多くの場合おなかから超音波装置で前立腺の形や大きさを調べます。直腸診では指を肛門から入れて前立腺を触って調べます。非常に進行した前立腺がんであれば、エコーや直腸診だけでがんの診断がついてしまうこともあります。
尿検査や、エコー、直腸診で、急性細菌性前立腺炎や前立腺肥大症の有無やその程度を判断できます。急性細菌性前立腺炎がある場合には、がんの精密検査の前にその治療を行います。すぐにPSAが下がるわけではありませんが、治療の数ヶ月後にPSAをはかると正常になっていることも珍しくありません。
年齢、前立腺の大きさや形、PSAの数値やこれまでのPSAの上がり方などから、前立腺がんが隠れている可能性を判断します。あくまでも可能性の強さを判断するだけであり、確実な判断のためには前立腺生検を行わないといけません。
前立腺生検でがんが無かった
前立腺生検は早期に前立腺がんを診断するためには必須の検査ですが、検査でがんがなかった場合にはある意味では無駄な検査だったということです。今回はがんが見つからなかったということで少し安心ができますが、すごく小さながんは検査では引っかからないことがあります。また今はがんが無いとしても将来がんができないとは限りません。その後もPSA検査を時々行ってPSAが増えていってしまわないかを確認しておいた方が良いでしょう。