泌尿器科情報局 N

前立腺肥大症手術の選択肢2

TUEB

前立腺を少しずつ削り取っていくのでは無く、前立腺の中心部分を丸ごとくり抜いてしまう手術方法です。くり抜いた前立腺の中心部分は専用の機械で細かくして吸い出すか、くり抜いた後に細かく切り刻んで取り出します。TURPと比べて、削り残しがないため、手術が不十分なままで終わってしまうことが少なく、前立腺が大きな患者さんで有用な手術方法です。きれいに手術が終われるので、手術後の出血もやや少なめです。機械はバイポーラーTURPを使いますが、電気メスの先に少し工夫がしてあります。前立腺をくり抜くためにカメラをいろいろな向きに大きく振り回す必要があるため、カメラを通す尿道に負担があり、手術後に尿道が狭くなる尿道狭窄の発生率がやや高めです。また施設によって多少差がありますが、尿を我慢する部分の粘膜が傷ついて手術後に尿失禁が起こる事があります。

HoLEP

前立腺をくり抜くという点ではTUEBと同じですが、止血のために使用する機械にレーザーを用いる方法です。くり抜いた前立腺の中心部分は専用の機械で細かくして吸い出します。TUEBと同様、削り残しがないため大きな前立腺の患者さんに有用です。また、尿道が狭くなることがあることや、施設によっては尿失禁が起こるかもしれないことがデメリットです。レーザーの装置が高額なため、装置のある病院は一部に限られます。

PVP(グリーンレーザー)

レーザーを用いる点はHoLEPと同じですが、使用するレーザーの種類が違い、前立腺の中心部をレーザーで焼き飛ばす様にして、尿の通り道を少しずつ広げてゆく手術方法です。レーザーが血液に強く反応するため出血が起こりにくく、合併症の少ない安全な手術方法です。デメリットとしては、中心をレーザーで広げる際にどの程度まで焼き飛ばしたかがわかりにくいため、上手な術者が行わないと、手術が不十分になりやすいことがあります。もし手術が不十分だと、手術の効果が現れなかったり、もしくは数年後にもう一度手術が必要となったりするかもしれません。レーザーの装置が高額なため、装置のある病院は一部に限られます。

TUMT(経尿道的マイクロ波高温度治療術)

カメラを用いてマイクロ波を前立腺にあてて前立腺の縮小をねらう治療法です。海外では比較的ポピュラーな治療法ですが、治療効果がやや弱いこともあり、日本ではほとんど普及していません。

尿道ステント

狭くなった前立腺の尿の通り道に、金属製の網でできた筒を入れることで、通り道を広げる治療法です。慣れれば手術時間は短く済みますが、違和感が強かったり、ステントに石ができてしまったりと、副作用が強いためあまり普及している治療法ではありません。

前立腺被膜下摘出術(開腹手術)

内視鏡の手術が発達するまでは、お腹を切って前立腺の中心部分をくり抜く手術が行われていました。出血も多く体の負担も大きいため、現在ではほとんど行われません。

手術方法の選択

どの手術方法が一番よいかは一概には決められませんが、上手な術者であればどの方法を行ったとしても、十分に安全で効果的な手術が行えます。当然、名人に手術をしてもらうのが一番のおすすめですが、名人はどの病院にもいるわけではありませんし、多くの病院では、熟練の指導者の下で若手の医師が執刀するのというのが一般的です。必ずしも熟練であれば手術が上手というわけでは無く、手術の上手下手は病院ごとで決まっている様に思います。上手な先生の手術を目標にできるので若手の先生もおのずと上手になってゆきます。もし指導者があまり上手で無ければ若手の先生も上手になるはずがありません。

病院ごとに導入している装置は異なるため、行える手術方法は病院ごとに限られますが、医師はその病院で使用できる手術方法の中から、一番得意な、もしくは一番患者さんに適した手術法を勧めます。良心的な医師であれば、その患者さんに安全で効果的な手術を自分の病院では提供できないと判断したときには、適切な手術ができる病院を紹介してくれるはずです。

自分が手術をするのであれば、一番古い内視鏡手術ではありますが、モノポーラーTURPで十分に安全で効果的な治療が可能だと思っています。もし病院や術者を特定せずに、平均的な成績で手術方法をおすすめするとすれば、高齢で持病のある患者さんでは安全性を優先してPVPが勧められますし、若くて前立腺が大きな患者さんでは、前立腺の中心部を残さず取り除けることを優先する方がよいのでTUEBやHoLEPが勧められます。