ピーカン、5月6日 (月)に閉店

名古屋を代表する中古レコード店・ピーカンファッジが、2019年5月6日(月)をもって閉店・廃業してしまった。
入居する今池ビルの老朽化による解体に伴うものだが、41年前の開店時からピーカンをずっと愛し続けて来たファンとしては、とてつもなく寂しい。
大げさな物言いかも知れないが、ピーカンは私の人生の節目節目に、常に安らぎと喜びを与え続けてくれた。
仕事の帰り道、ピーカンで時間をかけてゆっくりと品定めをするのが、私の日課だった。
そんな時、必ず何かしら素晴らしいアイテムに巡り会い、喜びに包まれた。
私の愛好するクラシックの分野でのピーカンの慧眼とポリシーは、並外れていてた。
音楽状況がどんなに変化し、CD・レコードの衰退が語られるようになっても、ピーカンだけはずっと生き延びてくれると信じていた。
しかし・・・1月末に久々に同店を訪れた時、いつもと何かしら違う店内の景色に気がついた。棚の半分くらいが空っぽになっていたのだ。
これまで閉店した多くの店で、同じような景色を私は何度も見ていた。
「いよいよピーカンも?」
と、いやーな感じがしたのだが、その数日後、店頭に閉店のお知らせの貼紙が出された。
ピーカンのスタッフの皆さんは、私と同じ団塊の世代のように見受けられた。
今、皆さんには心からこう申し上げたい。

「本当に長い間、ありがとうございました、そしてお疲れ様でした。
 ピーカンで過ごした素晴らしい時間を、私はずっと忘れません!」


(過去の記事)


ピーカン近況 (2017.2)

 クラシック売場の面積が縮小されて以後、ピーカン店内の雰囲気が何となく寂しい感じになった気がする。
ただ品揃えの方は相変わらず多様で、店頭の新入荷コーナーには、いつ行っても手を伸ばしたくなるアイテムが置かれているのが嬉しい。いまや常設化された感のあるバーゲン・コーナーも、随時追加されているようである。
(永く売れ残っている無名のバリトンの3枚組ライブCD3種、そろそろ私が引き取ろうかな・・・)

 ところで買取りシステムや仕入れの仕方が違うせいだろうか、同じ中古CD店でも、その品揃えなどの傾向が店によって違うのは興味深いところだ。
 名古屋の中古CDショップ主要4店のクラシック売場について、私の大雑把な印象を記させていただくと

ピーカン・ファッジ (値段) お手頃。バーゲン品が充実し掘り出し物も (盤質) とても良い (品揃え) オーソドックス主だが、珍しいものも多い (店の明るさ) 明るい (店の雰囲気) とても良い (客層) 中高年が多い

Music First  (値段) リーズナブル (盤質) とても良い (品揃え) オーソドックスと珍しいものとが混在 (店の明るさ) やや暗めで落ち着いた感じ (店の雰囲気) とても良い (客層) 若者から中高年まで多様

バナナレコード  (値段) 普通 バーゲン品はやや魅力に欠ける (盤質) 良い (品揃え) オーソドックス主だが、店によっては珍しいものも (店の明るさ) 明るい (店の雰囲気) 良い (客層) 若者が主。クラシック専門店「エロイカ」は中高年が多い。

サウンド・ベイ (値段) 普通。 バーゲン品は当り前のものが多いが、時に超お得品も (盤質) 良い (品揃え) オーソドックスと変わったものとが混在 (店の明るさ) やや暗め (店の雰囲気) 良い (客層) 若者から中高年まで多様

 あくまで団塊個人の大雑把な印象ですので、その辺りはどうかご容赦ください。
きっと私とは違った感想をお持ちの方もおられると思う。


ピーカン近況 (2013.1)


 2013年1月のはじめ、ピーカンに行ってみた。まだお隣の金券ショップは正月休みのようだったが、ピーカンは年頭から頑張っていた。
クラシックの売場は予想通り高齢の方が中心で、ブツブツと一人呟く人、老眼鏡をずらしチェックリストとCDを見比べる人など、皆さんそれぞれクラシックCDファン特有の、何となく近寄り難い雰囲気を漂わせていた。(私もきっと同様のオーラを周囲にまき散らしているんだろうな・・・)。
 一方、ポップス (この言い方、古い!) の店鋪の方は打って変わって、ナウなヤング (すっごく古い!!) で一杯だ。
ピーカンのクラシックの品揃えは順調だ。ひょっとしたら、ひと頃より入荷が増えているのだろうか。
あたりまえのもの、珍しいもの、オタク向きのものなど、特定の分野に片寄ることなく、その内容はバラエティに溢れており、特にオペラが充実している。
セット物も豊富で、いかがわしいCD-Rも、他店よりずっとリーズナブルだ。
ただ今回CD棚を眺めていて、一つ気になる事があった。十年以上前に発売されたヴァントのライブ物、バーンスタインが交響曲を指揮したもの、クレンペラーなどのミドル・プライスものなどが、やたら目立ったのだ。これは間違いなく「大全集」を濫発している最近のCDの売り方に、その原因があるのだろう。
クレンペラーのベートーヴェン・ブラームス・モーツァルト・ブルックナー・ロマン派の各交響曲集、バーンスタイン/NPOの交響曲全集 (60枚組 ! ) 、トスカニーニ大全集、ヴァントのライブ全集、DECCA・グラモフォン・PHILIPSなどの全集、カラヤンの60年代のグラモフォン全録音を集めたものなどなど、思い付いたものだけを列挙しても十指に余る。このような全集が、ほぼ毎月のようにリリ−スされ続けているのだ。
多くのファンはこれらを、店頭ではなくネットで購入する。
これらの全集は、CD1枚あたりにすると何と200〜300円程度という事になり、しかも全録音が網羅され「お買い残し」が無くなるるため、これまで1枚物をバラバラに持っていたファンは当然それらを中古CD店に売り払い、全集を購入するというわけだ。こんな古いバラCDを持ち込まれる中古店の方も、正直なところあまり嬉しくはなかろう。しかし買取りを拒否するとファンの心証を悪くするため、勢い中古CD店にはこれら1枚物のCDがズラッと並ぶ結果となるのだろうか。
どの世界でも「中古ショップ」とは、世の中の動きを写す「鏡」のようなものなのかも知れない。(2013.1)

ダウンロードやコピーの蔓延によって中古CD業界全体が厳しさを増す中、個人的に大好きだったピーカンの藤が丘店が閉店してからもう何年の時が経った事だろう。しかし今池のピーカンの方は往時の勢いには及ばないものの、今もその誠実な姿勢は健在だ。 そう、ファンが「来て良かった!」と思えるような品揃え (私はピーカンで、名古屋ではめったに見かける事の出来ない過去の巨匠達のレアな輸入CD、レコードを何度も入手することが出来た)、徹底したチェックによる盤質の良さ、そしてリーズナブルな価格である。ピーカンに行けばいつでも「これは買わなきゃ」と思わせられるCDに出会う事が出来るのだ。どこにでもある当たり前のCDばかり並べている店が多い中、ピーカンの誠実な姿勢は大いに賞賛されるべきだ。私は個人的に、ピーカンに感謝状を送りたいほどの気持ちを持っている。どうか名古屋中古CDショップ界の良心を代表するお店として、これからも頑張って欲しいと思う。
頑張れピーカン!!! (2011.4)           


★ 店の案内


 今池ビル一階にある「ピーカンファッヂ」は、「バナナレコード」とともに、名古屋中古レコード店の草分け的存在です。 「バナナ」がわりと店のポリシーよりも、店舗数の拡大等事業面での意欲が強いのに比し、この「ピーカン」はひたすら内部の充実を追い求めて来たように見受けられ、そのへんが多くのレコード愛好家の確固とした支持を受けている原因ではないか、と思います。 
 
 店の名前から察せられるように、もともとポップス系の扱いが中心なのですが、クラッシックに関しても実によく研究しており、品揃えも豊富で、にくらしいほど価格も適正についています。 よくクラッシックにあまり詳しくない店で、初期盤等貴重盤などを格安に入手したりすることもあるのですが、ことここピーカンでは、そうしたラッキーな楽しみはまずないと言っていいでしょう。 
品物の流通も早く、私などこの店に行くたびに必ずなにかしら欲しいCDに出くわしてしまうので、財布の寂しい時には出来るだけ近寄らないようにしている位です。 
また盤質のチェックの厳しさは他店の比ではなく、安心して購入出来るのも大きな魅力です。
 
 現在 (2011.4) は店頭には並べられていませんが、SPレコードの在庫も豊富で盤質も良く、通のファンの方には狙い目ではないでしょうか。 しかし残念ながらこの店独特の研究の成果により、価格はまことに適正 ( つまり高い ) です。 ビックリしたのはSP市場でもなかなか出回らない幻の名盤・メンゲルベルクの米Brunswick盤があったこと!! 
 一万円の価格が付いていましたが、きっともう売れてしまったことでしょう・・・。
 
 年2回ほど不定期にバーゲンを開催しており、これがファンには絶対見逃せません。
CD一枚300円コーナーにはけっこうハイプライス盤が出ますし (開店早々に行かないと、すぐ売れてしまう)、全商品10パーセントオフになります。
 
 ところで他の中古CD店はその客層のほとんどが若者ばかりで、私のような「おじさん」は入りにくい、ということが多いのですが、このピーカンでは勤め帰りの中高年サラリーマンの姿もけっこう多く見られるのも、個人的には嬉しいところです。 

 あなたもぜひ一度、この店を訪れてみてください。 

 ピーカンファッジ
 464-0075 名古屋市千種区内山3-33-8 新今池ビル1F TEL 052-731-3002
  営業時間 11:00〜20:00 (定休日 = 火曜日、第2,第3月曜日)

 
(おことわり)
このページ記事は、すべて個人的な趣味として作成したもので、毎回取り上げている店とは何の特別なコンタクト等は取っていないことを、ここにお断りいたします。

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