WASTED TIME

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可哀相に、君は立ちつくす。小さな顔を手の中にうずめて・・・。
ああ、神様、・・・君はまだ信じられないんだね。
また”恋の奇跡”が起きたんだってことが。
君のいとしい人が行ってしまい、全くひとりになったってことが。
残念だけど、終わっちゃったんだ。

君は、道をたどるように過去を振り返る。
恋の最初がどのように始まったかということまで思い出そうとしている。
私、他の誰かの存在に気を付けていたらよかったのかしら、なんて
ねぇ、そんなことがわかるはずがないじゃないか。
あいつはもう、行ってしまったんだから。
こうなるまで君は愛されないこととか、孤独に耐えることなんか
考えもしなかったんだろう。
君が今、何を考えているのか僕には分かる。
今までのことが、すべて無駄だったような気がするんだね。

秋の枯葉が、君を物思いにふけらせる。
”恋の奇跡”が自分の身にどうして降りかかったのかしらなんて考えている。
君は、あいつをそんなに愛しちゃいなかったさ。
違う、そうじゃないな、愛し過ぎ、ってほどに愛してなかったって意味だよ。

ねぇ、君はこれからも日々を過ごしていくんだよ。
明日を夢見るようにもなっていくだろう。
またときめいて時間が飛ぶように過ぎていったり。
ちょっと影がさすようなつらいことが起きたり・・。
でも次には、ほんの少しの努力で影を払いのけられると思うよ。

お聞き、僕はきっとたくさんのことをやってのけられると思う。
自分の悲しい気持ちをちょっと抑えることで。
僕は何を残すことができたんだろう、と迷いつづけなければ。
すべて無駄だったんじゃないか、と疑いつづけなければ。

―――ただ別の愛がやってきて、去ってしまったんだ。
時のたつのは早いものだね。
僕は、君がまだ自分自身だけを愛していたときに言った言葉を覚えているんだよ。
時々、それをかみしめてる。でも君は忘れちゃったみたいだね。―――

そう、君は、何か素敵なものをみつけられるよ、きっと。
僕も何かを探し続けよう。
そして、いつか僕らは気づくんだ。
ただの無駄な時間なんてものはないってことがね。

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大好きなD.ヘンリーが歌うバラード。
「彼が、私を棄てていってしまったの。」と泣きじゃくる女性を優しくなぐさめる歌なんです。
線が引かれた部分にくるまで、ただ諭してくれている歌なんだと思っていました。
原語で"another love has come and gone."・・・と表現されているので、・・はっと気づく。
つまり、ひとつめの愛は以前からあって、今もまだ・・・。
彼の深い愛情に気づかずに少女っぽくわがままにふるまっている、彼女にとっての幸せな過去。
そんなことをも思い出しながら、優しく暖かく、押しつけがましくなく(これがいいところ!)、心からの忠告を彼女に寄せる。
・・・素敵ですね。こんな男性がいるといいですね・・。

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