泌尿器科情報局 N Pro

症例008-3

解説

UDS

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1. 記録状況 腹圧をかけたときにわずかにPdetに波形が残りますが、おおむねサブトラクションは良好です。

2. 蓄尿期
capacity 439ml
compliance 良好
DO なし
尿意 FD 400ml ND 412mlとFDの出現の遅れがあり、FDからNDまでが短縮しています。提示された膀胱エコーでの膀胱の形態はいわゆるしわが寄った形であり膀胱壁の収縮性に問題がある様にも見えます。尿意を感じるメカニズムはそれほど詳しく分かっていませんが、この症例では蓄尿の始めは膀胱壁が伸びるのではなくしわが伸びて蓄尿がなされ、その間は尿意を感じず、ある程度以上蓄尿が進むと膀胱壁が伸展し、そこで尿意を感じるようになるのかもしれません。いわゆる、膀胱が伸びきってしまった状態、を疑わせる所見です。

3. 排尿期
Qmax 8ml/sほど
PVR 本来であれば、UDSのレポートに注入量から排尿量を減算した数値が示されていますが、古い症例のために記録が残っていません。Vmicのグラフで300mlほど排尿できているので残尿は100ml程度でしょうか。
Pdet 排尿筋収縮力は十分に上昇しており、PdetatQmaxは70cmH2O程度です。
腹圧 排尿時に腹圧はわずかに変化がある程度です。

ノモグラムに当てはめると

よって、排尿筋収縮力はW+、閉塞はIIIに判定されます。

UDSサマリー DO- DU+ BOO+

以上の結果より、下部尿路閉塞および排尿筋低活動がともに中等度影響した状況と判断されました。本人の症状、および残尿量が相当あるため、TURPをおすすめしました。ただし残尿は減るかもしれませんし減らないかもしれません。手術で閉塞がとれることで、Qmaxは増加すると予想されます。よって排尿の効率はよくなりますが、早く出せることと、最後まで出し切れる事は、ある程度は同調しますが、多少異なった結果が出ることもあります。時に、適度な膀胱容量では十分な排尿筋収縮力があっても、膀胱容量が少ないと収縮ができない症例があります。

この症例では、TURPをおすすめしたのですが、ご家族が狭心症の手術リスクを心配され保存的治療が選択されました。塩酸タムスロシン(ハルナール)およびデュタステリド(アボルブ)が投与されました。

投与後6ヶ月の時点ではごくわずかですが前立腺が縮小していました。

またUFMが多少改善し、残尿の増加もありませんでした。

残尿量42ml