泌尿器科情報局 N Pro

症例010-2

解説

認知症を伴うパーキンソン病の患者さんです。不穏状態の際に尿閉となることを3回繰り返しました。不穏状態のために尿閉となったのか、不穏状態に対して使用された薬剤のために尿閉となったのかは判断ができませんが、前立腺肥大症がどの程度尿閉に影響しているかを判断し、不穏状態が軽い時期にTURPを行っておくメリットがあるかどうかを判断するためにUDSを行うことになりました。

UDS

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Voiding phase

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1. 記録状況
EMGの波形が出ていますが、排尿状態に応じた変化はほとんどありません。ほとんと括約筋筋電図は拾えていないと思われます。
FDを患者さんが訴えた際にいったん注入を止めています。記録が残っていないので、なぜ止めたのかは定かではありません。尿意の訴え方が通常とは異なったのかもしれません。
そのほかの波形はきれいに拾えているようで、サブトラクションも良好です。

2. 蓄尿期
capacity 120ml
compliance 良好
DO なし
尿意 膀胱容量が小さいようですが、パターンはほぼ正常です。

3. 排尿期
Qmax 8ml/s
PVR 0ml
Pdet Pdetの最大値は60cmH2Oほどですが、PdetatQmaxは25cmH2Oほどです。
腹圧 腹圧はわずかに上昇がありますが、あまり影響はありません。
ノモグラム PdetatQmaxで判定をすると、収縮力はW-、閉塞度はIとなります。よってDU+、BOO-となります。

UDSサマリー DO- DU+ BOO-

Pdetの最大値だけをみると、60cmH2Oとそれほど低くないのですが、PdetatQmaxは25cmH2Oと低く、DU+ BOO-と判定されました。ノモグラム上の動きを見てみると、排尿開始後は収縮力が上がりますが、さしてQuraは上昇しません。これは尿道が広がっていないことを示します。しかし排尿後半には、収縮力はそれほど変化しませんが、閉塞度が下がりQuraが上昇します。つまり、排尿中に閉塞度が下がっているということです。パーキンソン病では、pseudodyssynergiaといって、尿道括約筋の弛緩が遅れる現象が指摘されています。

ということで、UDSでは閉塞はないという判定になりました。しかし、尿道カテーテル抜去の時期が、検査前日であったことが分かり、経過観察を行うことにしました。