泌尿器科情報局 N Pro

症例010-3

経過

UDSで閉塞がないと判定されたため、尿閉は不穏状態や、薬物のために発生したと判断してよいでしょうか。そういう症例もありうるとは思いますが、少し引っかかります。加えて、精神科病院に尿道カテーテルの抜去を依頼しましたが、実際に尿道カテーテルを抜去したのは、UDS前日でした。カテーテル抜去後の対応を不安に感じて、精神科病院では当院受信直前に抜去したようです。

ところが、これは当院にとっては誤算でした。UDSの結果は、尿道カテーテル留置の影響がのこった状態のものとして考えないといけません。ここから先は、実際の経過を見てもらうのが早いと思います。

経過観察の上、エコーの再検と膀胱鏡を行いました。

膀胱鏡

両葉のkissingを認め、閉塞があると判断されます。

エコー

前立腺は63mlと計測されました。前回のエコーでは29mlです。術者は同一ですので、非常に大きな変化があると言えます。

同一の縮尺で比べると明らかな変化です。

尿道カテーテルを挿入した状態で、前立腺が縮小する症例に時に遭遇します。この症例がまさにそうです。そのような患者では、尿道カテーテルを抜去した直後は自排尿が可能ですが、数日の経過とともに再度、尿閉となります。

この症例でも、カテーテル抜去の後、経過とともに前立腺は徐々に元のサイズに戻り、十分閉塞の原因となりうるサイズとなりました。幸い再度尿閉となることはありませんでした。

よって、この患者さんの尿閉の原因は、前立腺肥大による下部尿路閉塞にくわえ、不穏状態もしくは不穏に対して用いられた薬剤の影響の、二つの原因が重なったことによるものであると思われます。尿閉が不穏状態の原因となった可能性もありますが、カテーテル留置でも不穏状態がしばらく続いていたため、その可能性は低いと思われました。

この結果より、再度の尿閉を避ける目的でTURPをおすすめしました。しかし、家族が手術によるせん妄状態を心配し、ちょうどデュタステリドが発売された時期でしたので、タムスロシンにデュタステリドを追加して様子を見ることとなりました。その後尿閉となることはありませんでした。