泌尿器科情報局 N Pro

症例014-3

解説2

当院から退院後に尿閉となる患者さんが時々います。薬剤変更の影響が無いとは言い切れませんが、それよりは、介護環境の変化の影響が大きいと思っています。この方であれば、内科を退院する際には自宅へ退院し妻による介護となっています。妻は当然高齢です。交代勤務の看護師と同じ介護ができるでしょうか。中でも特に、入院時と退院時で変化しやすいのは、尿意の問いかけです。尿意が曖昧な一部の高齢者では、しばらくトイレに行っていないからトイレに行ってみようという、看護師の問いかけが無いと排尿を忘れてしまうことがあります。排尿を忘れているうちに膀胱が過拡張してしまうと、もともと排尿筋収縮力も低下しているため、一気に排尿ができない状態へと陥ってしまいます。

また、病院では二人がかりでトイレに座らせて排尿していた患者さんが、退院後は介護者がおらずトイレに移動できないためオムツ管理となってしまい、オムツではうまく排尿できず尿閉となってしまうこともあります。

いずれにおいても、時間ごとに尿意を問いかけ、尿意があるかしばらく排尿が無ければ、移動を介助してトイレへ座らせる、という行為が高齢者の排尿を維持していることがあります。当院では当たり前の様に行われてしまっているため、退院後に介護環境が変化しても大丈夫かどうかに気付くことが無いのは問題ですが、これは当院の看護師の意識の高さの裏返しでもあります。

尿意の問いかけや、排尿介護を積極的に行っていない病院では、入院時にオムツを当てられ、その為に尿閉となり、トイレにすわらせてみることなく排尿できないと判断され、尿道カテーテル留置となり、施設へ退院となります。施設で全身状態が改善した後にカテーテルを抜去したら排尿できる様になる患者さんがいるのは、病院で本当は必要の無いカテーテルを入れられている患者さんがいるということです。