症例018-3
解説2
大きな前立腺と、拡張した膀胱の76才の男性で、現在自己導尿を行っています。UDSでは尿意はおおむね問題ないものの、排尿筋収縮は確認できませんでした。
この患者さんでは前立腺は70mlを超えており、下部尿路閉塞のある可能性は極めて高いと思われます。神経障害を疑う他の疾患や症状が無いこと、自己導尿が始まる前もかろうじて自排尿で維持しており、また尿意も正常パターンであることから、神経障害が潜在する可能性は低いと思われます。
つまり、前立腺肥大症=下部尿路閉塞によって膀胱が拡張してしまった状態であると思われます。拡張してしまった膀胱が、自排尿が可能な程度の収縮力をだせるのか、もしくはいずれ回復するのかは、導尿離脱の分かれ目となります。
ここで、我々が出した答えは、手術をおすすめするというものです。自排尿へ回復するためには最低でもTURPが必要です。TURPを行うことで回復する可能性が高いのか低いのかの予想は、狭心症などの合併症を持つ患者では非常に重要です。自己導尿開始前までかろうじて自排尿をしており、TURPによって回復する可能性はとても高いと判断しました。ただし、導尿を離脱できるほどまで回復するかどうかは、多少不安が残ると考えました。
患者さんも手術に前向きとなりTURPが行われました。手術で42g切除されました。
術後エコー(膀胱)

術後エコー(前立腺)

術後経過
術直後 自排尿わずか。自己導尿で退院。
2週間後 自排尿100ml 導尿量200ml
2か月後 自排尿100~200ml 導尿量50~100ml
半年後 自排尿300ml 導尿量30ml となり導尿離脱。